おばんです。
今日は酪農ヘルパーとして働く方たちに講義をしてきました。
毎年、この時期に2回の講習が主催され、講師として招かれています。
今回は2コマの講義だったので、1コマ目を泌乳の生理と搾乳手技について、2コマ目を世界の酪農について話をしました。世界の酪農はニュージーランド酪農とパリの農業博について話をしました
先日の1回目は中堅研修ということで、かなりのベテラン相手だったので、専門的な話にしました。今回は初任者研修ということで、ほぼ1年未満の経験しかない方がほとんどでした。
今回のように、専門家だけど経験の浅い方や知識の少ない市民に酪農を伝えるということも、大学に籍を置く身としてとてもやりがいのある仕事になります。
もちろん、子供たちにウシの大きさや、牛乳の作られている場を紹介するのも私どもの大切な役割です。
私の娘が幼稚園に在籍していたときには、幼稚園のバス遠足を受け入れたりもしました。この前も、今は小学生の娘が、「遠足でお父さんの大学に行きたい」と言ってくれました。
ミルクの出る仕組み
泌乳の生理について、ざっくり解説します。
まずはじめに、ウシは分娩しないとお乳を出しません。
乳牛は特別で、その名の通り、年がら年中乳を出すと思っている方もいるようですが、決してそんなことはありません(^_^)
ウシは「ほ乳類」です。我々ヒトと同じで、子に与えるためにミルクを出すので、お産をしなければいつまでたっても乳は出しません。
立派な成牛になっても、子を産まなければ、乳房すら張ってきません。おなかの下からのぞき込まないと、乳房や乳頭を確認するのも大変なくらいです。
分娩が近づくと乳房が巨大化してきます。
乳を作る細胞や組織がどんどん発達するからです。この辺、ヒトのおっぱいと同じですね。私の妻も、お産の時はおっぱいが巨大化していました。
お産が引き金になり、乳の分泌が始まります。このことを泌乳といいます。泌乳開始には様々なホルモンが関与します。
毎日の搾乳はミルカーという機械を使っておこないます。
写真はニュージーランドの酪農家の搾乳施設です。中央に1セットのミルカーがぶら下がっていて、両方に装着する仕組みが独特です。
ウシはミルカーをつけて吸引すると乳を出します。しかし、ただミルカーを装着すれば乳があふれるように出てくるかというと、必ずしもそうではありません。ミルカー装着までの一連のルーティンを経ることで、搾乳刺激が生じ、その反射として乳が排出されます。
装着までのルーティンは、農場によって異なりますが、基本的には汚れている乳頭をきれいにすることと、前搾りといって乳房にたまっていたる飲用に適さない牛乳を手で搾り、廃棄することです。
子に授乳したことがおありの方なら経験がおありでしょうが、子供の泣き声や乳首への子供による刺激で、おっぱいが張ってきませんでしたか?
搾乳準備のルーティンや子による刺激で乳が張ることには、脳の下垂体から分泌されるオキシトシンというホルモンが関係しています。
乳房への物理的な刺激や、子の泣き声といった聴覚からの刺激によって、オキシトシンは血液中に放出されます。血流に乗ったオキシトシンが乳房に到達すると、乳腺組織における活発な乳合成と筋収縮による乳の移動が始まります。このメカニズムによって、乳房が張り、乳が乳頭口からほとばしり出るのです。オキシトシンが作用している間は、どんどんと乳があふれ出てきますので、子は労することなくお母さんのおっぱいから乳を吸飲することができます。
愛情や幸せに関係するホルモン、オキシトシン
オキシトシンは泌乳にまつわるときだけでなく、スキンシップなどでも分泌されます。オキシトシンの作用として、乳の分泌を促すだけでなく、分娩の際に子宮を収縮させ胎児の排出を促進する役割もあります。
さらに、愛情や幸福感を感じさせる働きもするようです。詳しくは調べていただきたいですが、オキシトシンの分泌は母親のみならず、あらゆるヒトにとって幸福をもたらすようです。
ホルモンっておもしろいですね。