乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

ウシの一生2:子牛の哺乳とGW最終日

みなさん、おばんでした。


ゴールデンウィーク最終日の今日は、札幌にある「さとらんど」という観光牧場&公園に娘と次男を連れて出かけてきました。自転車持参で、羊や牛をナデナデして、芝生の上で玉投げして遊びました。
姉と弟がキャッキャ遊んでいるの眺めているのは幸せな時間でした。

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 生まれ落ちた子牛と母牛の別れ

さて、子牛その2です。
前回は生まれ立ての子牛に初乳を飲ませることの大切さを解説しました。
今日はその続きです。

 

酪農は文字通り乳を搾り、その乳を売って収入を得る農業です。ということは、いつまでも子牛に母親のミルクを飲ませていては、酪農家は収入源を失ってしまいます。

そこで、初乳は母親からのミルクを飲ませますが、その後の哺乳は粉ミルク(代用乳)に切り替えることになります。母親のミルクですが、分娩してから最初の5日間は初乳期間ということで出荷することができません。6日目以降は通常乳として出荷することができます。

このような事情から、子牛をいつまでも母親と一緒に飼っていると母乳を飲んでしまうので、すぐに母子を離す必要があります。

 

たいていは産まれたその日のうちに、母子を分離し、子牛は子牛だけのスペースに移動します。

子牛のスペースは牛舎だったり、屋外にカーフハッチという小屋を並べただけのようなスタイルもあります。たまたま、今日訪れた「さとらんど」にちょっと大きな子牛がカーフハッチで飼われていました。

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ちなみに、カラスは今の時期子育てのための巣作りが盛んです。子牛を眺めていたら、カラスが子牛の腰の辺りにとまって毛をむしって持っていきました。私は職業柄、酪農家目線で観てしまうので、憎たらしかったです(-_-)

 

ハッチに移った子牛は、通常ならば1日2回粉ミルク(代用乳)を与えられます。1回に2リットル、1日4リットルを基準に、最近ではより多くの代用乳を与える農家も増えてきています。1日6~8リットルという飼い方も珍しくありません。

代用乳は、一般的にはヒトが粉ミルクをぬるま湯で溶いて乳首付きの哺乳瓶やバケツで与えます。大規模なところでは哺乳乳ロボット(自動哺乳装置)という機械を導入しているところも少なくありません。哺乳ロボットを子牛が訪問すると、機械が自動的にミルクを調合し、子牛に与えます。

 

最初はミルクだけを摂取していた子牛も徐々に固形飼料を食べるようになります。固形飼料といっても、いきなり草を与えるのではなく、ペレット状の配合飼料(人工乳とかスターターと呼びます)のみを与えるケース、スターターと柔らかい草の両方を与えるケースのどちらかに大別されます。

子牛はまだ幼いので第一胃(ルーメン)が発達していないため、繊維を消化できる微生物もルーメン内に定着しておらず、堅い繊維質の草を与えても消化できないからです。

 

ちなみにミルクは第四胃を通って小腸に送り届けられなければ消化・吸収されません。ルーメンに流れ込んでしまうと、そこではミルクは消化されないため、腐敗してしまう恐れがあります。そのような誤飲を防ぐために、哺乳期の子牛は巧妙な仕組みを備えています。

 

普通、ウシは液体を飲むと、その液体はルーメンに流れ込みます。ですが、乳首からミルクを飲んだときにだけ、食道からルーメンを迂回して第三胃以降にミルクが直接流れ込むような反射が生じます。これを食道溝反射とか第二胃溝反射と呼びます。

 

哺乳期間は1ヵ月から3ヵ月くらいが一般的で、この期間は個々の農場の方針、戦略によって異なります。

次回は、哺乳期~離乳期にかけての飼育法についてもう少し掘り下げてみます。