乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

ウシの一生:哺育期~離乳、ルーメンの発達

みなさん、おばんでした。


ウシの一生ということで、章立てして始めましたが、書いているとだんだん細かくなってきて先に進めなくなってきました(^^;)

まずは、哺乳子牛について、今回で一旦整理し、それ以降は改めて紹介しようと思います。

ウシの一生が長い道のりだと、改めて実感しています。。。

と、そのまえに。

 

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ブログ継続の難しさ

このGW期間中はブログの更新が難しかったです。。。

私は、基本的に妻や子どもと一緒の時間にPCを開いたり、携帯をいじることはしません。なぜなら、子どもと遊んだり、妻と語らったりすることが私の生きがいであり、かつ人生の最優先事項だからです。

最も幸せを感じられる瞬間を削ってまで取り組むことはそれほど多くはありません。当然、仕事もそれに優先されることはありませんし、ブログもその上を行くほどではありません。

 

そうはいっても、このブログを始めるに当たり可能な限り毎日更新を誓いました。

(ほぼ)毎日更新することで、これまでの弱かった自分が変われると考えたからです。

アウトプットを続けることで自己成長に繋がると確信したからです。

45歳になって始めた新しいチャレンジ。
アタマの薄くなりかけたオジサンでも始められる、自己啓発ツールといいましょうか。

関心を持って訪れてくれる方がいるということも猛烈なモチベーションアップに繋がります。

家族との時間を削らずに、効率よく短時間で記事をアップするスキルをもっと身に付けないとけません。

そんなことを考えたGWでした。

 

ルーメンの発達と哺乳

ミルクは栄養満点。
スポーツ選手の子ども時代の話しを聞くと、水代わりに牛乳を飲んでいたなんていう話しをよく耳にします。

 

ウシも同じです。

哺乳期間を長く、かつ飲ませる量も多くすると、それだけ発育(増体)速度は速まります。

しかし、粉ミルクはウシのエサの中では価格が高いです。

さらに、粉末をぬるま湯でとき、飲ませ終わった後のバケツを洗う負担や労働のコストも決して小さくありません。

固形飼料であれば、ウシが勝手に食べてくれるので楽ちんなので、できることなら早く離乳(卒乳)したいものです。

 

ルーメン(第一胃)の発達の観点からも、哺乳方法に迷いが生じます。
牛はミルクを飲むときに食道溝反射が生じることは、前回お話ししました。

dairycow2017.hatenablog.com

 乳首を使ってミルクを飲むと、ルーメンを経由せずに直接第三胃に流し込むアレです。

これを続けていると、ルーメンは不要で、なかなか発達しません。
使っていない筋肉が衰えるようなイメージでしょうか。

 

この状態は、反芻動物というよりは、我々ヒトと同じ単胃動物と変わりありません。
せっかく4個の胃袋があるのに、前の二つが使われない状態です。

 

早いところ第一胃、第2胃の機能も充実させてやらなくてはいけません。

そのためには、固形飼料を食べさせて、ルーメンの内部をエサで満たしてやる必要があります。そうすることで、微生物も増殖し、エサは発酵します。エサが発酵するとガスが生成されます。ルーメンはそのガスを吸収するために粘膜組織の絨毛を伸ばします。絨毛が伸び、その数が増えると、ルーメン全体の表面積が増し、ガスと付着する面積も増え、ガスの吸収量がアップします。吸収されたガスは、ウシの発育のためのエネルギーに使われます。こうして、未熟だった子牛のルーメンが、成牛のルーメンに負けない機能を獲得するのです。

 

ルーメン粘膜組織の絨毛を発達させるためには、草よりも穀物などの濃厚飼料(スターター)を与える方が効果的です。草は繊維質リッチなので、発酵速度が遅く、ガスの生成量が少ないからです。

このような背景から、哺乳期間中の固形飼料の与え方も議論が分かれるポイントになります。
すなわち、草をやらずに濃厚飼料だけをやるのか。
それとも、草も与えるのか。

はたまた、草だけを与えるのか。

 

私は、濃厚飼料メインで少量の草も合わせて与える派です。
草を与えることで、繊維を分解する菌が増殖を始めます。草を与えないでいると、繊維分解菌はいつまでたっても、その生息数を増やすことができません。そのような状態で離乳すると、離乳後の草主体のエサへの切り替えに適応できないと考えるからです。


ただし、草を与えすぎると消化が遅く、満腹感が持続してしまい、少食の子牛は十分な栄養を摂取できません。したがって、栄養濃度を上げるために穀物も与える必要があります。

ヒトのアカチャンもミルクを与えすぎていると、空腹感が起こらず、離乳食を食べる量がなかなか増えないのではないでしょうか。

 

こうして、ミルク主体だった子牛が徐々に固形飼料の摂取量を増やしていき、離乳を迎えることになります。産まれたときに40数キロだった子牛も、離乳時期には100kg近い体重に発育しています。ヒトでいうなら、立派な児童でしょうか。

 

一般的な酪農場では、子牛の飼育環境も、個室(カーフハッチ)から、相部屋(群飼)へと変化します。


離乳のストレス、新しい環境へのストレス、これらが原因となってこの時期の子牛は体調を崩しやすいので、注意深い観察が求められます。

 

生まれ落ちてすぐ母親から離された子牛ですが、離乳直後のストレスを克服した頃には、仲間たちとも打ち解けて、元気に走り回るようになります。

 

桜の季節は放牧の季節。
子牛たちが牛舎の外で走り回る姿もぼちぼち見られるようになります。

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