乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

フランスで感じた牛が感じるストレスについて:牛のニーズは、農家のニーズ

フランスから戻りました。
短期間でしたが、フランス人の食やワインについて、酪農産業について、研究に対する取り組み方について、多くの気づきがありました。

これから少しずつアウトプットしていきたいと思います。

 

まずは牛への接し方、居住環境あるいはストレスフリーについてのフランス人の考え方についてです。

 

今回、私はフランスの企業の研究農場、民間の酪農家2軒の合わせて3軒の酪農場を訪問しました。

 

すべての農場で、管理者から聞かれたのが「ウェルフェア」を意識しているという言葉でした。アニマルウェルフェアは単刀直入に動物福祉と訳されることが多いです。

 

日本では動物福祉というと、セットになるのが動物虐待といった負のイメージです。ずさんな管理のもとで動物に苦痛を与えながら飼育する、といったイメージでしょうか。

 

ですが、実際の酪農現場で、私はそのような飼い方に遭遇したことがありません。酪農場におけるアニマルウェルフェアは「動物に配慮して、動物がより一層快適に過ごせるような飼い方をする」といったニュアンスがしっくりくると思います。

 

フランスで観た3軒の酪農場も牛の飼い方は、素晴らしかったですが、日本の酪農場が格段負けているようには感じませんでした。

日本でも優秀な管理をしている農場では、普通に見ることができるレベルです。

 

興味深かったのは次の点です。

 

牛の飼い方は日仏で大きく違いがなかったものの、管理している生産者の意識が全く違いました。
みな口々に「我が農場ではアニマルウェルフェアを意識している」と熱っぽく語っていました。それも何度も。日本では、ウェルフェアについてあえて強調するように口にする農場主は少ないのではないでしょうか。

 

これは国民も交えた価値観の違いからくる、意識の差だと感じました。
消費者もアニマルウェルフェアについての感心が相当高いそうです。

 

さらに興味深かったのが、「アニマルウェルフェアを徹底することで、動物が快適になり、その結果ストレスが減って乳量が増える」と、生産効率向上に結びつけて理論展開していたことです。

 

日本では家畜のウェルフェアを意識する=農家にとっては人的にも施設投資的にも負担が増えるといったように、どちらかというとマイナスのイメージが強いように思えます。これは、以前話を聞いたアメリカ人研究者も同じことを語っていました。

 

しかし、フランスで出会った数人の酪農生産者は、自分たちの利益に繋がるものとしてウェルフェアを認識していました。日本では、生産性追求とアニマルウェルフェアの追求は両立しないという考えが少なくないように思います。

 

読者にうまく伝わるかわかりませんが、日仏の発想の違いに私は軽いショックを受けました。
物事を一面から見ていてはダメだという、キョーレツな事例でした。

 

マイナスでやらされていると思えばイヤで仕方ないが、プラスにとらえて受け入れることで利益になる、と思えばやる気が出てくる。やることは同じなのにです。

 

外から自分を見つめ直すと違った見え方がする。
45歳にしてまだまだ新しい発見の毎日です。

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