乳牛と酪農を科学する

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乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

フランス料理は太るのか? 乳牛栄養学的に考察してみる

さて、明日は、ここ毎月恒例の帯広での獣医師対象の栄養学学習会です。

その準備がいつも自転車操業な上に、今は卒論実験が牛舎で毎日入っており、非常にやばいです。。。

今日も朝は牛舎、夕方からは明日の準備と、少々焦っています。

最後の仕上げは、明日3時間半の特急の中でやる予定です。大丈夫かな。。。

 

というわけで、今日は超集中してあっという間に書き上げました。

 

さて、みなさんのフランス料理のイメージは???


高カロリーで太る、というイメージではないでしょうか?

 

少なくとも私も今回フランスに行くまではそのように思っていましたし、実際現地で料理を食べると肉中心にソースがたっぷりの見るからに高カロリーな食事が続きました。料理がおいしい上に、デザートも基本食べるので、毎食満腹になるまで食べました。おまけに野菜は付け合わせくらいでほとんどありません。その代わりフルーツはジュースも含めてずいぶんとりました。

 

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そのような1週間を過ごして、帰国し、体重計に乗ったところ。。。

なんと、出国時と増減は全くありませんでした!
あちらでは運動をしたわけでもないのに!!

 

今回の現象を乳牛栄養学的に考察してみました。

私はウシを使って、エサの評価試験をします。今年の卒論も大半がそれです。

Aというエサを食べさせて乳量や嗜好性を観察し、次にBというエサに切り替えて同じ測定を繰り返します。

 

しかし、ここでエサの切り替えによって牛の胃腸の状態が大きく変化します。

第一胃内の微生物相が安定するまでは1週間から10日はかかります。胃腸が落ち着くまでの期間は、エサの切り替えによる影響で乳量は安定しません。場合によっては乳量が減ってしまいます。

 

この期間は、仮に乳量が低下したとしても、Bというエサの影響ではなく、エサの変更による影響ということで測定結果には加えません(予備期や馴致期といいます)。純粋にBというエサの影響を見るのは、1週間なり10日なりの予備期が開けてからになります。

 

フランス料理は、フランス人も同様でしたが、メインディッシュのボリュームがあるため、付け合わせのパンを食べようという気にそれほどなりません。

メインを食べ終えた後に、一切れのパンを使って、お皿に残ったソースをぬぐうように食べるくらいで十分です。〆のパンといったところでしょうか。

 

というわけで、炭水化物の摂取量が日本にいる時と比べてとても少なかったです。肉だけでお腹いっぱいになる感じといえば良いでしょうか。

おまけに、ワインを飲むので、料理を待つ間も、パンに手を伸ばす気にならないという面もあります。

 

滞在中は、甘じょっぱいおかずでご飯をたくさん食べる日本食から、肉食のフランス料理に大きく食生活が変わりました。

 

糖質と繊維中心の和食
vs
高タンパク、低炭水化物のフランス食

 

私は、この変化に完全に順応する前に帰国してしまいましたので、胃腸の消化・吸収メカニズムや体内の高タンパク質代謝経路が整わず、体重増加に結びつかなかったのではないかと考察しました。

 

エサの切り替えによって乳量が下がるウシと同じ状態だったのかな、と想像するわけです。胃腸が混乱をきたしていた証拠に、便の状態も日本の時のようなバナナ健康便ではありませんでした。私の大腸微生物も悪い方向に乱れていました。

 

消化管の順応は個体差が大きいので、これは私に限った話しかもしれませんが、滞在中は満腹に食べつつけたのに全く体重が増えなかったという事実から、乳牛栄養学的に考察してみました。