乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

牛の体調が悪くなりました:卒論実験を通しての成長

今年の我が研究室の卒論研究は6人の履修で5テーマです。


先日、長い調査期間を終えて無事終了したOさんの実験。

あとは、現在進行中で終盤にさしかかった2題、これから本番を迎える1題、まもなく開始に向けて最終の詰めを行っている1題となっています。

 

これから本番を迎える実験については、宮崎県から獣医師の先生を招いて共同で取り組むものです。2週間前から牛舎での準備に取りかかっており、今週後半に本番を迎えます。

 

この実験は、若い雌牛(育成牛)を使っての実験です。
12頭の牛を3群に分けて、各群それぞれに異なるエサを与えます。
エサの違いで、ルーメン(第一胃)の状態やその他の生理指標が変化するかを測定します。

 

↓ある日の実験牛舎

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担当のS君とともに連日、エサを計量して、牛の観察を続けてきました。しかし、慎重な観察にもかかわらず、昨日、実験牛の1頭が体調不良になってしまいました。

 

普段食べ慣れないエサに切り替わったことが原因で、食欲が減退して、エサを食べなくなってしまったのです。

 

S君とともに牛の変化を見逃さないように、細心の注意をはらいながら少しずつエサを切り替えていたのですが、体調不良牛が発生してしまいとてもショックです。

 

人もそうですが、牛も生き物、何があるかわかりません。

 

幸いにも昨日1日様子を見たところ、その牛は元気を取り戻しましたが、念には念を入れて実験対象から外しました。再度悪化したら取り返しが付かなくなるからです。まずは軽症で済んでホッとしました。


牛はかわいそうでしたが、実験上のアクシデントは、学生にとって世の中マニュアル通りには進まないこともあるという学びになったと思います。

 

生き物を通しての教育効果がここにあります。

子育てもそうですし、夫婦の間も、組織の人間関係も、すべて自分の思い通りに行かないことばかりです。

そういった人生の上で避けて通れない試練を、つぶらな瞳でこちらを見つめる牛を飼うことで学べるなんて、得がたい経験ではないでしょうか。

 

牛にはエサや水をやらなければいけないので、自分の都合を優先するわけにはいきません。雨が降ろうと、雪が降ろうと、必ず牛舎に行かなくてはいけない。牛が待っているからです。

かわいいだけではない牛の世話を通して、学生たちは成長していきます。

 

今週後半の実験本番に向けて、もう少し緊張の日々は続きます。