乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

酪農の経営について考える実習

先週も紹介しましたが、今日も乳用家畜飼養学実習がありました。
今日の内容は、酪農場の収支を考えるというものです。

 

私は農業経済学者ではないので、経営について詳しいことはわかりません。
そこで、農場の経理担当の職員にもサポートを頼み、本学農場をモデルに実習を行いました。

 

酪農の主な収入は牛乳販売収入と、牛を売ることで得られる個体販売収入の2本柱です。

 

前者は、とても興味深い計算式で、販売単価が算出されます。
たとえば、牛乳に含まれる乳脂肪率が3.5%を基準として、0.1%上昇するごとに0.3円/リットルの加算、0.1%低下するごとに0.3円/リットルの減算となります。

 

たとえば、乳脂率3.8%の牛乳は、基準となる3.5%と比べて0.3%プラスの値になるので、0.3円×3=0.9円/Lだけ単価が上昇します。

 

他にも、加減算となる成分の項目があり、それら乳成分の上昇分だけで、本学の規模だと牛乳販売収入が100万円前後変わってきます。

成分の基準値は下限近くに設定してあるので、たいていは増額になります。

 

また、個体販売収入ですが、何度かブログで紹介したように、近年は市場価格が高騰を続けていることもあり、酪農家にとっては追い風です。

たとえば、オス子牛は1頭あたり10~15万円の値を付けます。

そういったもの合算すると、1千万円に届く売上となります。

 

次に、支出です。
乳を出す牛は、エサも良く食べます。
本学では、牧草などの粗飼料は全て自給しているので、購入するエサはそれ以外の穀類やビタミン、ミネラルなどのサプリメントになります。その他、子牛用の粉ミルクなども購入しています。それらエサ代で、1千万円のオーダーとなります。

 

その他、大きな支出では、人件費、牧草やトウモロコシの種や肥料代、修繕費、燃料代、家畜診療費、光熱水費などがあります。

おもしろいところでは、牛乳販売手数料などもあります。これは、牛乳1リットル当たり3円が手数料として、タンクローリーの集送費として徴収されます。
「1リットルで3円くらい、たいしたことないや」と思ったあなた。
「酪農はかけ算」という、私が作った格言を忘れていませんか?


本学の年間出荷乳量は、およそ700トンです。
ということは、700,000kgです。

これに、3円/kgをかけると、2,100,000円/年になります。

こうみると、バカにならない大きな金額ですよね。

 

こうして、億に近い売上を上げる一方で、支出も四捨五入すると億に届く金額がかかります。

 

酪農はいかに、巨大な産業かということがわかります。
そして、酪農は、大きく儲けることができる、やりがいのある仕事であるといえます。

 

今日の受講生に、酪農家出身の学生がいました。
彼も実家の手伝いなどは経験しているのですが、ここまで詳しく財布の中身を知る機会はなかったようです。

とても熱心に受講していました。

 

私は技術屋ですが、お金を稼ぐということ、働くということ、そういったことの意味も折に触れて、紹介していこうと考えています。

 

↓フランスでみた巨大収穫期

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