乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

A2ミルクを知っていますか??

牛乳を飲むと便が軟らかくなる人がいます。
私はそういった症状はありませんが、日本人を含む、アジア系の人々に多いことが分かっています。

 

これは、牛乳に含まれる、乳糖という成分が関係しています。
乳糖は、普段口にする砂糖と似た形をした糖の一種です。


砂糖と似ているのですが、分子構造的にわずかながら形が異なり、そのことが原因となって、腸での消化が悪くなってしまいます。

このように乳糖をうまく消化できない症状を、乳糖不耐症といいます。

 

乳糖不耐症の原因ですが、私は次のように想像しています。

私たちアジア人は、もともとは農耕民族なので、乳製品を摂取することになじんでいない、そういった体質に起因するのではないでしょうか。

 

乳糖以外に、牛乳を飲むと下痢をしてしまう症状があります。
それは、カゼインというタンパク質が原因となって起こります。

 

牛乳に含まれるカゼインにはいくつかの種類がありますが、その中のひとつにβ(べーた)カゼインがあります。


βカゼインには、さらにタイプがあり、「βカゼインA1」と「βカゼインA2」という2タイプが確認されています。

 

乳牛で一般的なホルスタイン牛は、牛乳中にA1タイプとA2タイプの両方を出す系統とA2のみを出す系統に、遺伝的に分けられるそうです。

 

最近、ニュージーランドやオーストラリアを中心に、A2タイプのβカゼインのみを出すウシから搾った牛乳を、「A2ミルク」として売り出し、人気を博しているそうです。

 

A2ミルクがなぜ注目を集めるようになったかというと、A2ミルクがヒトの健康に効果がありそうだと考えられるようになってきたからです。

 

乳糖不耐症とは別に、A1タイプのカゼインが原因となって腸に悪影響が生じ、牛乳を飲めないヒトがいるという説があります。

こういったヒトでも、A2タイプのみの牛乳であれば、理論上ゴクゴクと飲めると考えることができます。

 

さらに、A2タイプの牛乳には、健康に関する様々な効果が期待できるという考えも広まってきました。

 

さらに、A2ミルクを販売する企業のマーケティングも相まって、ここ最近、日本でも注目度が高まってきています。

 

私は、最近目にするようになったA2ミルクについて、多少調べてみましたが、健康改善に関する確実なエビデンス(証拠)を見つけることはできませんでした。

しかし、A2ミルクは、現在の酪農業界では最もホットなトピックスですので、しばらく注目を続けたいと思います。


興味を持たれた方は、「A2ミルク」と検索してみてください。

 

↓うっすらですが、虹がかかっています。

f:id:dairycow2017:20181101182302j:plain