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差別、見下しを考えました:映画「ドリーム(Hidden Figures)」

1961年、NASAソビエトは、宇宙への有人ロケット打ち上げ競争にしのぎを削っていました。
当時は、コンピューターがなく、ロケット打ち上げのための計算はすべて手計算でした。

私も、実験データをエクセルや専用ソフトで統計処理をしますが、手計算とは想像ができません。

 

ロケットを軌道に乗せたり着陸地点を算出するための計算担当部署に、有能な黒人女性が登用されるという、映画を機内で観ました。

 

ドリーム(Hidden Figures)

ドリーム : 作品情報 - 映画.com


NASAのラングレー研究所があるバージニア州は、黒人差別の激しい地域でした。

当時の黒人は、あらゆる場面で白人と差別されていました。

カラード(有職人種専用)と書かれた、トイレ、バスの座席、図書館、食堂・・・あらゆる場所がホワイト(白人)と、分離されていました。コーヒーポットまで、黒人と白人が分けられていました。

 

映画は実話がベースで、NASAの白人スタッフたちは、計算能力や物理学などに秀でた有能な黒人女性たちの力を借りざるを得ません。

当時の大統領はJFケネディで、キング牧師に代表される黒人差別撤廃運動の気運が高まっていました。

さらに、黒人だけではなく、女性というだけでも、差別されている場面も多々描かれていました。

 

今朝、千歳空港のとある飲食スペースで、次のような場面に遭遇しました。
60歳前後のオジサマ、コップに注いだ牛乳をこぼしてしまいました。
その後、ホール係の女性を呼んできてこぼれた牛乳をふかせます。

自分はというと、なんとビールを注いできて、隣の席でおつまみ片手にビールをゴクゴク飲み始めました。すぐ隣の席では、女性が床に這いつくばって、彼がこぼした牛乳を拭いていました。
オジサマは女性に一瞥もくれず、悠々とスナックをポリポリやりながら、ビールを飲み続けていました。客なんだから当然ということだったのでしょう。


2018年の日本も、女性に対してその程度の感情しか持ち合わせていないオジサマがいらっしゃいます。

 

憤慨して、こんなオジサマがいたと妻に電話したところ、「お父さんは男だから経験ないだろうけど、女に生まれたら男に見下されることは何度も経験するんだよ」といわれました。「だから、うちの息子たちにはその辺をしっかり教えておかなきゃダメだと思ってるんだよね」ということでした。

 

我が日本は、ケネディ大統領の時代から何も進歩していないということになります。

 

私の実家は、ラーメン屋でした。
ラーメン屋稼業もゆるくない世界です。

横柄な客に頭を下げている両親を見続けながら、私と妹は育ちました。

お金を払えば何をしても許されると勘違いしている心の貧しい人にだけはなりたくありません。

 

黒人差別と女性見下し、どちらも根っこの貧しさは同じです。

 

映画は、史実に即しています。

黒人女性の能力なしには計画が進まないと判断した親分肌の上司の働きかけによって、彼女たちは活躍の場を与えられていきます。

主人公の女性は、映画のエピソード以降も長らく一線で活躍し、アポロ計画スペースシャトルの打ち上げにも貢献したそうです。

草創期のIBMもでてきて、フォートラン言語も登場しました。

学生時代、フォートランのプログラムに悪戦苦闘した身としては、懐かしい想いでした。

宇宙への有人飛行、その陰には、数学・物理に秀でた黒人女性たちの活躍があったのです。

とても素敵でカッコいい映画でした。

ミュンヘンの街並み