先日の北海道新聞に「別海に牧草バイオ発電所」という記事が載りました(4月4日付)。
別海に牧草バイオ発電所 地元企業など建設 サイレージ原料:どうしん電子版(北海道新聞)
これは、なかなか画期的なことだと感じました。
まずは、バイオガス発電というシステムについて紹介します。
基本的な原理は以下のようなものです。
家畜の糞尿を、嫌気発酵させる(酸素のない状態で加温してやる)と、微生物が働いてメタンガスが生成されます。
メタンガスは燃えるので、燃料として使うことができます。
メタンガスは、実はとても身近な存在です。
都市ガス(天然ガス)の主成分です。
メタンは直接燃やすだけではなく、ガスエンジン(発電機)を動かすこともできます。
その電気は、売ることができます(売電)。
つまり・・・
糞尿
↓
嫌気発酵
↓
メタンガス生成
↓
発電機を回す
↓
電気を作って売る
↓
収入源
という図式が描けます。
嫌気発酵させるためには糞尿を貯留し、温める施設が必要になります。この施設を温めるのも、メタンガスを使ったボイラーを利用します。
新聞記事にあった別海町のように酪農の中心地では、ウシが食べきれないほどの牧草が収穫されるケースが珍しくありません。
栄養学的に価値のある1番草以外に、1番草収穫後に再生してきた2番草、2番草収穫後に再生した3番草は、栄養価が劣るとされています。
ウシが食べきれない再生草が、農家の庭先で放置されていたりするのも、よく目にする光景です。本学でも、豊作の年は、3番草などは余剰在庫になりがちです。
今回の記事では、このような牧草を細かく砕いて、メタン発酵させ、発電のための原料にするというものでした。北電との長期契約で「年間の売電収入を約1億円と見込む(同紙)」と書かれていました。
無駄になりがちな牧草を、有効利用して、収入源にするというのはおもしろい発想だと思いました。
一方で、ヨーロッパでは、このことが行きすぎた事例があります。
売電単価が高すぎる国では、農家は栽培した穀物を、ヒトや家畜に食べさせずに、バイオガスプラントでメタン発酵させてしまうケースがあるそうです。
穀物を売るよりも収入源としてはメリットが大きい場合にとられる選択肢だそうです。
食料を食べずに、電気にしてしまう。
たとえ金銭的には理にかなっていても、「??」と思う人は多いのではないでしょうか。当然ながら、穀物からのメタンガス生産を問題視する声も現地では高まっているそうです。
今回の記事は、無駄になるものを有効活用する取り組みで、興味深い内容でした。
バイオガス発電というシステムの、奥行きの深さを伝えるトピックスだと感じました。
↓バイオガス発電したあとの糞尿は液状になります(消化液)。これは畑にまかれて肥料として有効活用されます。