乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

栄養学・飼料学の入門書が発刊されました

ウシの栄養学、飼料学のテキストが発刊されました。

「臨床獣医」という技術雑誌の臨時増刊号です。

「獣医師のための飼料入門(緑書房)」

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実は、このテキストの監修は、僕です。
人生初の監修ということで、とても楽しい仕事を経験させていただきました。

 

監修というのは、企画や執筆者の依頼、校正などの役割を担います。

編集担当者のSさんともに、半年間、二人三脚で仕事を進めてきました。
コロナが始まる前だったので、東京のカフェで打合せをしたのが懐かしいです。

 

企画で、こだわったポイントが大きく二つあります。

 

一つ目は、これまで僕が、若手獣医師や学生たちと酒飲み話をしているときに、質問の多かった項目を盛り込もんだことです。

 

彼らとの会話の中で、栄養学系のセミナーで講師が普通に使う専門用語、実は参加している聴衆が理解していないことがままあることを知りました。

講師は当然知っているものとして専門用語を駆使して講演しますが、聴いている方が理解していないために、内容が全く伝わっていなかったという笑えない話もあるようです。

 

講師が発する専門用語やそのメカニズムなどは、なかなか質問しづらいですよね。
わからないままスルーしてしまうことが多いのではないでしょうか。

 

一例を挙げると、uNDFとそこから計算されるNDFの消化速度って、わかりやすく説明するのはなかなか難儀なものです。

 

脂肪酸カルシウムと硬化油脂(トリグリセリド)の違いなんかもパッと言えないかもしれません。

 

本書では、そういった「今さら質問しにくい疑問」に答えることに力点を置きました。若い方には、カンペ代わりにページを繰ってもらえればと思います。

 

二つ目は、現場で遭遇することの多い悩みについて、具体的に深掘りしてもらったことです。

 

不良粗飼料しかとれなかったときの対処法は?

牛乳の異常風味が発生したときどうする?

病弱な子牛群を健康な群に変える秘訣

サプリメントの給与法、などなど

 

実際の現場で出会う悩みについて取り上げさせてもらいました。

それぞれの項目について、現場に精通した専門家や最先端の研究者に筆を執っていただきました。

 

根底にあったのは、僕自身が20年間、大学牛群の飼料設計に携わってきて、答えのない悩みに日々苦しんできたという経験です。

いろいろな人からクレームを頂戴するものの、教えてくれる人もいなく、ネット情報くらいでは回答を得られない疑問は、牛を飼っていればナンボでも発生します。

悩みの火中にあったときは、本当に苦しかったです。

 

今回は、そういった書きにくいテーマについても、無理を言って執筆陣にお願いしました。

原稿のやりとりの中では、もう少し平易な言葉でとか、もう少しわかりやすく解説してくださいと、執筆の先生たちに、生意気にも質問や注文をぶつけさせてもらいました。

面倒な僕の問いかけにも、一つ一つ丁寧に応えていただき、各パートが完成していきました。

 

こうして本書は出来上がりました。


本書は、エサの勉強の入門書としても使えってもらえるでしょうし、年季の入った専門家にもヒントを提供できるような内容に仕上がっていると自負しています。

 

自画自賛できるできばえだと思いますが、これも、ひとえに執筆を受けてくださった先生たちと編集スタッフの粘り強い努力のおかげです。
筆や舌では表せないほどの感謝をしています。

 

現時点では、最新のエサのテキストです。

手に取ってご覧いただければ、この上ない喜びです。