乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

乳牛のエサ設計:小麦粉のエサ利用

おばんです。

 

明日は飼料設計の見直しをしなければいけません。農場の牛群の飼料設計を見なおすタイミングはいくつかあります。

 

飼料設計見直しのタイイング

最も多いのは牧草やトウモロコシを保存しているサイロを使い切って、次の新しいサイロを開封するときです。サイロは乳酸発酵させるためにビニルシートで密封しているので、新しく使い始めるときはシートを切り開く必要があるので、開封という言葉を使います。ちなみに乳酸は酸素のない状態で発酵が進む特徴を持っています。

 

もう一つのタイミングはウシの乳量が大きく変化したときです。飼料設計は乳牛が必要とする栄養を満たしてやるように組まなくてはいけません。必要とする栄養にもっとも強く影響するのは乳量です。乳量がたくさん出るウシにはそれに見合った量の栄養を増給します。逆に、乳が減ると与えていた栄養を減らしてやります。そうしないと、ウシはドンドン太っていってしまいます。

 

三つ目は、それまで与えていたエサが何らかの理由で使えなくなってしまったときです。今回はこの3番目の理由に該当します。

 

昨年の秋口に技師の知り合いの小麦を扱う企業から、商品として流通させられない小麦を大量にいただきました。倉庫で保管中に袋に穴が開くなどして、小麦の品質には何ら問題はないものの商品として販売することができないものが大量にでたのです。私たちの農場で手を挙げなければお金を払って廃棄してしまうしかないものでした。まだ食べられるのにとてももったいない話しです。

 

写真がその小麦粉です。全くきれいなものですよね。

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袋にちょっとした傷が付いたりやほんのちょっとでも期限を越えて古くなったものは全て廃棄。

これが日本の企業と消費者の現実です。食料自給率が40%に届かない国に住んでいる人々がこのようなことを要求し、食品を売る企業はその要求を受け入れているのです。

 

小麦粉はウシにとっても立派なエネルギー源

小麦粉を与えている間は、同じデンプン源として普段与えているトウモロコシの給与を減らすことができました。小麦粉は廃棄の手数料がバカにならないので、タダでもらってくれるなら助かるということで、コストゼロでした。企業にとっても、我々農場サイドからとってもメリットのある、Win-Winの関係といえます。

 

小麦の栄養価はどうでしょうか。

これは、データでお出しするまでもないでしょう。小麦はパンや麺に形を変えて、世界中のヒトがエネルギー源として日々摂取しているものですから、栄養的に悪いはずがありません。極めて高エネルギーの優秀な飼料です。

 

ということで、約半年エサとして利用してきた小麦ですが、来週には底をつくという報告が今朝の牛舎ミーティングで報告されました。

(ちなみに、この報告は若い職員からのものでした。こういった報告はチームとしてとても助かります)

来週からは、小麦の代わりにトウモロコシ購入の復活です。コストがまた少しアップすることになります。私たちの農場も経営を意識するのは当然で、コストダウンは最優先課題です。

ということで、コストアップをできるだけ抑え、なおかつウシの健康を害さない飼料設計を組まなくてはなりません。真剣勝負なので、神経が疲れるけどやりがいのある作業です。