乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

異分野の融合で世界が広がる

神戸空港
ようやく暖かくなって、今日は日差しが照ると暑いくらいです。
新千歳に向かう便が悪天候でひょっとしたら折り返すかもしれないとのこと。
え~、今頃になって雪なの??

 

昨日、学会発表終了後に共同研究をしている企業と京都大学と3者で研究の打ち合わせをしました。
京大のK先生は私たちの畜産の分野とは異なり、農芸化学の分野で微生物や発酵が専門です。異分野の先生とのディスカッションはとても刺激的でヒントの多い時間でした。

異分野の研究者が手を握ることでストーリーが生まれる

 

彼は今回初めて畜産学会に参加したとのこと。
丸1日発表を聞いて、発表者に共通するある傾向を感じ取り、お腹いっぱいになったと言っていました。
畜産分野の研究と彼の生化学的な研究とでは、対象に対するアプローチの仕方が異なっているそうです。

 

たとえばあるエサの評価を乳牛を使っておこなうとします。


エサを与える→ウシが食べる→乳量が増える、といった結果が出たとします。

我々畜産屋はこういった結果が得られたことで「よかったよかった、おしまい」といって研究を完了するケースが少なくありません。

 

しかし、ウシの体内では、エサの成分が体内に吸収されたことで、何らかの変化が起き、その結果として乳量が増えるという反応が生じています。

農芸化学の研究者はその仕組み(メカニズム)を解明することに重きを置くので、結果がよければオッケーという畜産分野の研究になじめなかったそうです。

 

テレビのリモコンのスイッチを押すとチャンネルが変わる。なぜリモコンの信号でテレビが反応するのか、そのメカニズムを追求するかしないかといった違いでしょうか。

 

しかし、これはそもそもその研究者の置かれた立場が違うので仕方ない部分もあります。

畜産分野の研究者は、一刻も早く成果を出し、その技術を農家さんに使ってもらわなくてはいけません。メカニズムはともかく、そのエサをあげると乳量が増えるということがわかれば、それは農家の経営やウシの健康にとって重要な意味があることになります。スピードが大切なのです。

 

この出張に持参した「栄養学を拓いた巨人たち」(杉晴夫著)にもその辺の分野の異なる研究者たちの話が多数紹介されています。

 

ビタミン欠乏症でばたばた人が死んでいた昔、臨床医はある食品を与えると症状がぴたっと改善されるということを発見します。医者はやってもそこまでです。その後は生化学の研究者がその物質を突き詰めて行く作業を実験室でおこないます。

そうやって数々のビタミンが発見されてきたことが紹介されています。

 

つまり、私が昨日考えたことは、畜産分野の研究者がメカニズムを軽んじるからダメだとか、そういう話ではありません。分野の異なる研究者同士がタッグを組んで研究に当たると話の筋が通った一本の太い成果が得られるよ、ということです。

 

これまでは、私は畜産分野以外の先生と研究上のディスカッションをする機会はありませんでしたが、この共同研究で人脈が広がり、世界が広まりそうな予感がします。

 

いろいろなオファーがあったら、ハイハイと二つ返事で受けて、顔を突っ込むことで視野が広まります。まずは、YESという癖をつけたいものですね。

 

さて、飛行機、無事に着陸してくれるかな。。。

 

↓昔のドイツシリーズ。蒸気機関車

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