乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

牛の採食行動:ウシは1日にどれくらい食べることに費やすのか

みなさん、おばんでした。

今日はようやく家庭菜園に堆肥を入れることができました。

ミミズたっぷりの堆肥を入れて畑を軽く耕しました。誰かさんの頭と同じ寂しくなった芝生には種を買ってきて追加播種しました。苗も買ってきたので、明日定植です。

朝は次男と一緒に空手、空手教室では相変わらずシクシク泣きべそをかく次男

妻からは酔っ払った昨夜の私に対して「バカは死ななきゃ直らないって言葉通りだね」と笑われました。

賑やかな一日が終わろうとしています。

 

↓フランス中央部の山岳地帯のウシたち

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ウシは1日何食??

 

前回は牛が草を噛み切り、飲み込むまでを解説しました。

 

dairycow2017.hatenablog.com

 
実は私はウシのルーメン(第一胃)に関する栄養学が専門ですが、採食反芻などの咀嚼行動も専門分野の一つです。

 

私の通っていた大学は、入学時点で所属学科が決まってなく、1,2年次の成績順に希望する学科に配属になるシステムでした。私は大学1,2年の成績が悪く、第1希望の学科に落ちて畜産学科に配属になりました。確か第2希望だったはずです。

ですが、畜産学科で学ぶうちに、家畜を飼うこととの面白さに目覚め、所属研究室は食肉や乳ではなく、ウシの飼い方を学ぶ研究室にしようという思いが強くなっていきました。
当時の私は、ウシがエサを食べている姿を見るのが、なんとも言えず幸せでした。

 

研究室では、ウシの採食、山の中に放牧されたドサンコ馬の採食、そして卒論で本腰入れて研究しためん羊の採食と様々な家畜の採食を観察しました。

ですが、やっぱり眺めていて最も心が吸い込まれたのはウシの採食でした。

 

ウシは1日でみると300分~400分採食します。およそ5~7時間です。放牧しているともう少し長い時間採食します。

このことで私の恩師がおもしろい話をしてくれました。

ウシも馬も1日1000分近く咀嚼をする。ウシは採食が400分、反芻が600分、馬は我々と同じ単胃動物で反芻をしないので、採食のみで1000分ということでした。

ウシは馬よりも食べる時間が短い代わりに、食べたエサを長時間反芻することによって噛み戻し、より多くの栄養素をエサから回収可能になりました。

 

牛飲馬食という言葉があるように、ウシよりも馬の方がより長い時間エサを食べるのです。

ウシが馬よりも水を飲むのは、乳を出すので水を必要とするからですし、ルーメンの中に生息する大量の微生物に快適な環境を提供するためにも多くの水を飲む必要があります。

 

さて、牛舎で飼っているウシは1日に10回程度に分けて採食をします。

ヒトは1日3食ですよね。ウシは10食ということになります(^^)

 

トータル300分として、10回で割ってやると1回あたりは30分です。1回の食事の時間は、だいたいヒトと同じくらいになりますね。彼女たちは採食と採食の合間に反芻を挟みながら、1日の大半をモグモグ口を動かして過ごすのです。

 

ちなみに1日は何分なのか、とっさに答えられますか?
24時間というのはインプットされているでしょうが、分となると微妙な方は多いのではないでしょうか。

 

私は24時間行動観察をずっとやってきていますので、1440分という数字が頭に染みつきました。

1日1440分のうち約1000分を口を動かすことに費やすウシや馬。
こう考えるとおもしろいですよね。