私たち、研究者にとって研究の成果を世に公表することはとても重要な使命です。
私の専門である乳牛の栄養・飼養学では、新しいエサや牛の飼い方について研究します。その結果、有益であることが確認できた技術については、酪農家や関係機関あるいは消費者に知ってもらいたいですし、実際に使ってもらえると研究者冥利に尽きます。
そのためには、まずは研究の成果を世間に公表しなくてはいけません。
その手段が、卒論発表、学会発表、講演会での発表、酪農業界の技術書あるいは学会誌の研究論文発表です。
今日は、最後の研究論文の投稿について紹介します。
↓私の最近の研究論文です。苦労も多いだけに達成感もひとしおです。
現在、私は春まで研究室に在籍したミャンマー人のMさんとともに学会誌への投稿に取り組んでいます。
本学に在籍中のMさんは、それはそれは熱心に研究に励み、帰国後に英語の国際学会誌への投稿を準備していました。
彼はとても熱心で能力も高いのですが、彼の大学には研究予算がほとんどありません。学会誌への投稿も、著名なものになればなるほど高額な投稿料が必要になるので、いくら素晴らしい研究をしてもお金の問題で論文投稿を断念するしかありません。
二流、三流の学会誌だと投稿料はドンドン安くなり、Mさんがいつも投稿するのは投稿料が無料のフリー学会誌だということでした。
今回は私との共同研究なので投稿料は工面できますので、Mさんの能力に見合ったある程度認知度の高い学会誌に投稿しようと計画しました。
二人で論文を練り込み、英語の校正についてはプロの業者に頼み、満を持して韓国に事務局のある学会誌に投稿しました。
その審査が進み、昨日回答が来ました。
結果は・・・
リジェクト(却下)でした(T_T)
事務局からのコメントが書かれていましたが、3点の却下理由のうち、私たち二人とも納得がいったのは1点のみで、残りの2点はナンセンスな理由でした。
投稿された研究論文は数名の審査員でチェックされます。これを査読といいます。
査読をする審査員は、必ずしも投稿された研究内容に精通しているものではない人が当たることも珍しくはありません。
例えば私は現在、あるミャンマー人の論文の査読を担当していますが、牛のウイルス性下痢に関する調査論文で私の専門との関連はほとんどありません。
今回のMさんの論文も、門外漢に当たったのかなと思わせるトンチンカンなコメントでした。
私もMさんも、大ガッカリです。。。
ただ、納得のいくコメントもないわけではなかったので、その点については修正を加えて別の学会誌に投稿し直そうということで話はまとまりました。
せっかくのMさんの日本で頑張った成果ですから、ある程度著名な学会誌に何とかアクセプト(受理)されるよう頑張ります。Mさん、毎日カップラーメンをすすって生活を切り詰めて研究に没頭していましたから。。。
研究論文の発表というのは、厳格な審査がある一方で、今日のケースのように「運」のような非科学的な要因もゼロではありません。
この非科学的な要因の比率が低くなるほど、逆に言えば客観性が高まるほど学会誌のレベルが上がる、ということになります。権威ある学会誌にはおかしな論文はまず掲載されませんので。
そういった意味では、非科学的な理由で却下するような今回の学会誌は一流とはいえないのかもしれません(投稿料だけは一流ですが。。。)。
ある意味、リジェクトされて良かったのかもしれません。もっと論理的に査読してもらえる学会誌に再投稿することにしましょう。
Mさん、がんばりましょう!
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最後に情報提供です。
本日、私の大学テレビで取り上げられるそうです。19時からです。
【日本列島 大学の旅】で酪農学園大学が放映されるとのことです。
ちなみに私は写ってはいません(^^;)