乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

研究者のノルマとは?

先週末に北海道畜産草地学会が新得町畜産試験場で行われました。
私は、昨年、この学会の学会賞をいただきました。
非常にありがたく、かつ名誉なことです。

 

その受賞式と講演は昨年の学会で行われる予定でしたが、北海道を襲った大型台風の影響で大会自体が中止になってしまいました。
そこで,今年の学会で昨年の分も行われることになったのです。

 

学会賞の受賞講演を大勢の参加者の前でおこなってきました。

合わせて、私のゼミの4年生も学会発表をしました。

私も、学生も、無事に役目を終えることができました。

この先もスケジュールが詰まっていたので、ほんのひとときではありますが、ホッとしました。

 

8月中旬から、私の受賞講演に加えて学生の学会発表指導もあって、バタバタの準備でした。同時に、卒論研究のサンプリングや原稿の締切をいくつか抱えて、超充実した日々を駆け抜けました。今日も、青森北高校で1年生を対象に酪農についての講義をしてきました。今週末は帯広で獣医師対象の学習会です。そのスライドの準備もまだできていません。。。

 

学校の先生といえば、世間一般には、夏休みはのんびりできて羨ましいと思われているかもしれません。ですが、私の場合は講義のないこの時期は一年の中でも一番の書き入れ時です。

 

さて、学会発表ですが、私も学生もバッチリ大成功で終えることができました。
特に4年生のIさんは経験のない中、本当に頑張りました。彼女以外の学生発表者は全員国立大の大学院生だったので、私大の学部生の彼女は大いに健闘しました!
頑張った!エラい!

 

↓発表ポスターに描かれたイラスト(Oさん作)。

f:id:dairycow2017:20170905223514j:plain

 

私のポリシーですが、研究者は自らが研究した成果を学会や論文、業界誌などで公表しなくてはいけないと考えています。つまり、研究者のノルマです。

 

ですが、公表したからといって給料が上がるわけではありませんし、ノルマをこなせなかった罰則があるわけでもありません。
そのため全く成果を発表しない研究者も少なくありません。

 

今回の受賞講演はたったの25分です。学生は3分のスライド発表+1時間のポスター討議だけです。しかし、そのわずかな時間に対して何十日というスパンで準備のための時間を費やします。簡単な作業ではないし、当然ながら発表当日は批判的な意見も頂戴することもあります。


日頃、「先生」と敬われているお方がケチョンケチョンにされるかもしれないことは、恐怖だと思います。給料にも反映されないし、時間は取られるし、はっきり言ってメンドクサイ。

 

大学教員の場合、教授への昇格はひとつの目標であり、ゴール(上がり)ととらえる人も少なくありません。
私は、現在教授の身分なので、仕事に精力的に取り組んでも、与えられたノルマだけをこなしていても、生涯年収に違いはありません。だから、教授に上がったら学会で発表することをやめてしまうセンセイも珍しくありません。

 

しかし、私は、研究者としての矜持や学生に研究の楽しさを伝えたいという使命感から、今後もノルマを果たすべくアクセル全開で行くつもりです。

そんなことを考えた学会発表でした。

 

偉そうにいろいろ書きましたが、学会賞の受賞は本当に嬉しいです。これまで支えてくださった諸先輩や農場のスタッフ、研究を共にしてくれた学生たち、そして一番の理解者であった妻、多くのみなさんのおかげでこの賞をいただくことができました。

ありがとうございます。

f:id:dairycow2017:20170905223918j:plain