乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

スマート農業がきてます

昨日の「ガイアの夜明け」は、スマート農業が特集されていました。

スマート農業というのは、ITやAIの技術を使った機器を使って農業や畜産、酪農の作業を軽減したり精密化したりするものです。

 

スマート農業には様々な分野で活用されています。

 

大きなところでは畑を耕すトラクターにGPS無人運転装置を取り付けたりするものが開発されています。1台のトラクターに運転手が乗り、もう1台は無人で併走しながら作業をするというところまでできるようです。

 

同じく畑で使う機器として、昨日の番組ではドローン+AIによる薬剤散布が紹介されていました。害虫駆除は通常トラクター使って殺虫剤を畑一面に散布するのですが、ドローンを用いて虫食いになった大豆の株にだけピンポイントで散布するというものでした。農薬の使用料が劇的に低減することができます。

 

そのほかに牛の分娩兆候を観察して、お産が始まりそうになるとメールで連絡が行くという装置も紹介されていました。

分娩の介助は私も経験がありますが、夜中にかかることも多く、農家にとってこれほど厳しい作業はありません。

通常は牛舎に泊まり込みでほぼ徹夜で分娩に備えるところを、自宅待機が可能になるだけでもかなりの負担軽減になります。

 

番組とは離れますが、重たい荷物を持ち上げる際に、身体に装着すると機械が持ち上げるのを手伝ってくれるという電動アシストスーツなんかもあります。

大リーグ養成ギプスの逆バージョンといった感じになります。
こちらは知人から聴いた話ですが、アシストスーツを身につけるとお年寄りでも数十キロの荷物を軽々と持ち上げることができるようになるそうです。

 

私の研究室でも、農場で応用するために牛の様々なデータをスマホタブレットで一元管理できるプログラムを導入しようと考えています。

 

また、本学には国内に先駆けて導入されていますが、ヒトに代わって機械が搾乳するという搾乳ロボットも最近は右肩上がりで普及が進んでいます。

ちょうど今日、卒業して10年の教え子Y君が私のが学会賞受賞を祝いに訪れてくれました。彼はオホーツク地方で酪農を営んでいますが、彼や彼の周りでも搾乳ロボットを実際に導入したり、導入を考えているという話でした。

 

↓フランスで見た2台導入の搾乳ロボット

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このようにIT機器や技術が農業分野に参入してきたのはここ数年から古くても十数年です。しかし、だからこそ、ITやAI、ビッグデータを扱う業界には未開の金脈に映るのでしょう。


私が昨年参加したオランダの学会はその名もずばり「精密酪農学会」というように、最先端の機器や装置を駆使した研究が多数紹介されていました。
同じく、昨年訪れたドイツの畜産展示会でも、多くの海外メーカーがソフト面の展示を行っていました。

日本よりも一足、ふた足先に海外では大きなうねりが始まっています。

 

我が国でも、農業のIT化は注目を集めており、国をはじめとする自治体や農業関連団体からの予算もかなり投入されているようです。


農業者の作業が楽になり、企業も潤う。
スマート農業は、農畜産関連のビジネスとしても、研究としても、今、最も熱い分野と言ってもよいでしょう。