ここ数日、立て続けに、北米で活躍する研究者による、酪農や研究についての考え方について学ぶ機会がありました。
一つは、先日もご紹介した、帯広のセミナーです。
今日は、マジメに、酪農の技術について触れたいと思います。
日本では、搾乳ロボットが、飛ぶ鳥を落とす勢いで、普及してきています。
↓本学の搾乳ロボット(搾乳中)
酪農現場での人手不足と、国の補助事業による追い風を受けて、音を立てるかのように導入が進んでいます。
2018年5月21日付の「酪農スピードNEWS北海道版 第3710号」によると、700台に迫る勢いで、全国で搾乳ロボットが稼働しています。
さて、搾乳ロボットを、乳牛管理に組み込む場合に課題となるのは、エサの管理技術です。
搾乳ロボットシステムでは、ロボット内で給与する濃厚飼料と、ロボットとは別の飼槽で給与するTMR(正確にはPMR:部分的混合飼料)の、二本立てとなります。
TMRとロボット内濃厚飼料を合わせて、1頭の牛の1日分の飼料給与量となるように、配分を考えなくてはいけません。
多くの酪農家では、ロボット内濃厚飼料を2~3kgから4~5kg給与しているのではないでしょうか。
本学では、最大で1日5.5kg当たるように設定しています。平均的な乳量の牛では、4kgくらいになります。
この、ロボット内濃厚飼料の給与量ですが、厳密には次のような計算によって、求めているということを、セミナーで学びました。
これまで、私は、ロボット内の濃厚飼料給与に関して、合理的な積み上げ方式で考える習慣がそれほどありませんでした。アメリカ人の、科学的根拠に基づいた考え方に、目からウロコの思いがしました。
まずは、牛の配合飼料の採食速度から考えます。
牛は、1分間で200~300gの濃厚飼料を、摂取します。
ロボット内では、搾乳時間を含めて、6~8分の滞在時間が標準的です。
となると、1回の搾乳ロボット滞在で、牛は1,200~2,400gの濃厚飼料を食べることができます。
搾乳回数が1日3回とすると、牛は、3.6~7.2kg/日の濃厚飼料を、ロボット内部で食べられる計算になります。
搾乳回数が2回だと、2.4~4.8kgになるし、4回だと4.8~9.6kgが、ロボット内での採食可能量になります。
濃厚飼料はペレット状で、牛が、搾乳ロボット内に進入してくると、ちょうど鼻先に位置するエサ箱に、ジャラジャラと落ちてくる仕組みなっています(写真では、左側の頭が隠れている部分です。牛はせっせとエサを食べています)。
牛は、搾乳されている間に、そのエサをモグモグと食べる、というわけです。
ロボット内で給与する濃厚飼料の量は、管理コンピューターで設定します。
先ほどの考え方を知らないと、食べきれない量を入力することになりかねません。
食べられないエサは飼槽に残ってしまい、次に入ってきた牛が食べてしまうので、食べ過ぎの牛は太ってしまいます。
ヨダレと混ざった食べ残しは腐敗の原因になります。
設定量を食べ切れなかった牛は、栄養不足で、体調不良になるかもしれません。
このように、搾乳ロボットの飼養管理は、ロボット内配合飼料一つをとっても、いくつもの要因が絡み合っています。
搾乳ロボットは、単に搾乳を機械がやってくれるだけではありません。
エサ、移動(歩行)、休息、糞尿処理など、総合的なシステムとしてとらえなくてはいけません。
搾乳ロボットの導入を考える場合には、農家、栄養管理者、機械メーカーなど、関係者一同が、システムを上手に運用できるように、勉強する必要があるでしょう。