乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

学生は、講義の何割を理解しているのか?

私が担当している講義・実習に、家畜栄養学と家畜管理栄養学実験というのがあります。

そこでは、牛の第一胃(ルーメン)の栄養素の消化について、学んでもらいます。

 

先日、栄養学の講義の後に、わからないことがあるので、教えて欲しいという学生が私の部屋を訪ねてきました。

 

教員の部屋を訪ねてくるのは、多少なりとも勇気のいることなので、むちゃくちゃエライことだと思いました(少なくとも、私は学生時代、そのようなことはしたことがありません(^^;))。

聞くと、ゼミ発表で、ちょうどこの分野について発表することになっているとのことでした。

 

さて、その学生たちに、エサに含まれる炭水化物やタンパク質が、ルーメン内の微生物によって、どのように消化されていくかについて、レクチャーして感じました。

 

私が講義や実験で話していることが、全く理解できていなかいということです。


それほど回数はありませんが、講義や実験において、ここら辺については説明を重ねてきました。

ですが、断片的なキーワードは頭に入っていても、それらの複雑な結びつきまでは理解ができていなかったようです。

 

確かに、ルーメン内の栄養消化は、相互に関連し合ったシステムとなっているので、断片的な知識だけで、全体像を語ることはできません。

 

ある事柄が発生すると、それが発端となって別の事象が動き出す。それによって作られた物質が、また別の事象を引き起こす・・・といった具合だからです。


全体を俯瞰して、牛、エサ、微生物、発酵産物などのパーツを結びつけて、考える必要があります。

 

ただし、一旦それらの関連性がわかると、暗記物と違って一生忘れることはありません。

 

このような分野なので、何度かのインプット(講義)だけでは、身に付けられないのですね。

 

訪問してきた学生たちにじっくりと解説した後で、私は、プリントを作り直し、講義で再度理解を深められるような取り組みをしました。

 

その教材に使ってみたのが、欧米のYouTube動画です。
さすが、酪農の先進国は違います。
英語でキーワードを入れてやると、日本ではまずあり得ないような豊富な映像や、講義動画が、わんさか出てきます。


それを、ゆっくり日本語で解説しながら、学生たちに観てもらいました。

日本語で一方的に受け取る講義と違って、彼らも考えながら、立ち止まりながら、見入ることができたのではないかと思います。

 

先日、仕事関係の食事の席で話題に上っていたのが、「小・中学校の先生が話す授業を、生徒は1割しか理解していない」というものでした。

 

私の講義も、それに近いものがあったのかもしれません。

講義が一方的にならないように、工夫は重ねていたのですが、まだまだ足りなかったのでしょう。


わざわざ質問しにきてくれた、意識の高い学生がいてくれたおかげで、

 

気づくことができました。

どれくらい理解が深まっているのか、学期末のテストが楽しみです。

 

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