乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

牛乳の成分からウシの栄養状態が分かります

乳牛の栄養状態は、エネルギーバランスという言葉で表されます。
エネルギーバランスがプラスまたは正の場合は、必要とするエネルギー量(エネルギー要求量)よりも摂取エネルギー量が多く、ウシは太っていきます。

 

逆に、エネルギーバランスがマイナスまたは負の場合は、エサとして口から入ってくるエネルギー量だけでは、必要エネルギー量をまかなうことができないため、ウシは痩せていきます。

 

ヒトがダイエットするのと同じ意味合いです。

 

さて、ウシが痩せていくとき、彼女らの体内ではどのようなことが起こっているのでしょうか。

 

マイナスのエネルギーバランスの時、ウシは皮下脂肪や内臓脂肪といった体脂肪を、血液中に溶かし、その脂肪分によってエネルギーをまかなおうとします。

 

しかし、そもそもウシは、炭水化物をエネルギー源とする生き物です。脂質をエネルギーとして利用することになれていません。

 

薪でも、紙でもよいですが、何かを燃やすとき、不完全燃焼になるとススが出ます。

ウシの体内でも同じです。
ウシは、炭水化物を燃やしてエネルギー源とするときは、きれいに燃えつくすことができます。一方、脂質を燃やしてエネルギーを得ようとすると、不完全燃焼になりやすく、ススや煙のような不純物質がたくさん出てきます。

 

このススや煙に当たるものが、ケトン体です。
脂質の燃えカスであるケトン体は、血液中や乳中、尿中に排泄されます。

 

そこで、牛乳中のケトン体濃度を調べることで、乳牛の栄養状態が分かるようになりました。計測に用いられるケトン体は、ベータヒドロキシ酪酸といって、BHBまはたBHBAと表されます。

 

BHB濃度の高いウシは、何らかの理由でエサを充分に食べられず、体脂肪を削って(溶かして)エネルギーを補っている状態です。

 

このようなウシを発見したとき、早急に手を打たないと、低エネルギー状態が続き、不妊(繁殖障害)や脂肪肝、第四胃変位といった病気発症のリスクが高まります。

 

牛乳をみることで健康状態が把握できるなんて、とても興味深いです。ですが、これは新しい技術なので、これから普及が必要でしょう。
まずは、学生たちに知ってもらいたいです。

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