私たちのような中小規模の私立大学では、教員はマルチな仕事を求められます。
講義(教育)、学生の卒論指導、研究、論文執筆、学会発表、業界誌への技術的なレポート投稿、講演などといったものは、みなさんが大学教員に抱くわかりやすい業務ではないでしょうか。
現在一緒に仕事をしているカナダの教授に尋ねたところ、あちらでは、この範囲が教員に与えられた業務内容だそうです。
ようするに、専門家は専門とする仕事だけをするということです。
おそらく、北大など旧帝大や、首都圏の有名私大の教員は、どちらかというとカナダ流のワークバランスだと想像します。
一方、私たち地方の私立大学はといいますと、学生教育や専門的な仕事に加え、大学運営に関する仕事も大きなウェイトを占めます。
入試問題の作成、試験監督など分かりやすいものから、学内の様々な委員会、事務作業、学生向けの進路、就業指導など多岐にわたります。
さて、私には今、そのような学類の運営業務の一つとして、学生の研究室配属作業の担当があります。
先日、来春4月からの研究室所属を決めるガイダンスを、現2年生に行いました。
一昔前は紙で希望調書を提出してら持っていましたが、今の時代ですので、ネット上のシステムを使って研究室配属をします。
その操作方法の説明の後、ゼミ選びの心構えを伝えました。
研究室選び、どうしても研究内容のわかりやすい名称の研究室が人気になりがちです。
研究室の名称だけではなく、その活動のスタイルや方針も重要だと、私は考えています。
私が最も重要だと思うのが、ゼミ活動を個人のマイペースで行うのか、チームとしてある程度の拘束がある状況でやるのか、ということです。
私の研究室では、動物の飼育管理があるので、どうしてもチームで牛舎活動する場面が多くあります。時に、自分の時間をゼミ活動のために差し出すことが必要になります。
牛や動物は好きだけど、ヒトと一緒にチーム活動をするのが好きではない、自分の時間を他者のために使うのが苦手、という学生も少なくありません。
集団活動が苦手だからといって、そのことが悪いというわけではありません。
集団で活動する方がパフォーマンスを発揮できるタイプと、芸術家や職人のような孤高のタイプなど、ヒトには様々な個性があるからです。
研究室選びに求められるのは、研究室や教員の専門性だけではなく、ゼミ活動のスタイルが自分の好みやタイプにマッチしているか、という方が重要なのではないかと、私は最近思うようになりました。
ちなみに私の学生時代の所属研究室は、スタッフ全員で、家畜の調査や管理に従事するという、部活や会社のような活動スタイルでした。
時に、個人の時間は後回しにして、ゼミ活動を優先しなくてはいけない場面もありました。
私は、その辺は単純な思考回路なので、それほど苦に思うこともなく、濃厚な生活を大いに楽しみ、育てられもしました。
自分には、あのスタイルがピタッとはまったということでしょう。
ミスマッチは、本人にとっても、研究室にとってもハッピーなことではありません。
研究室で過ごす時間は、人生で最も充実した学生時代の集大成といってもよいでしょう。
そこでの時間を楽しく過ごせるように、自分と研究室のスタイルが適合しているか、じっくり吟味して研究室を選んでもらいたいです。