道内某所の養鶏場を、農場HACCPの審査員として訪問してきました。
私は乳牛、酪農が専門のため、ニワトリについては学生時代の講義で習った以上の経験はありません。
一消費者と同じ程度の知識レベルです(^^;)
近代的な養鶏場では、卵を生産するためには、3段階に分かれた生産システムがとられています。
1.卵からヒナをかえす農場
2.ヒナから卵を産み出す直前まで育てる農場
3.親鳥だけを集めて卵を生産する農場
1から3までがそれぞれ別の経営体で、ニワトリは養鶏場をその一生で渡り歩きます。
今回私が訪問したのは、2段階目のヒナを親になるまで育てている農場でした。
ヒナを漢字で書くと雛と書きます。
この字は、ヒナとも読みますが、スウとも読みます。
したがって、ヒナを育てることを育雛(いくすう)とよび、こういった農場を育雛場といいます。
訪問先では、可愛いヒナが何万羽も育てられていました。
ひな鳥は120日齢(4ヵ月齢)前後から、産卵を始めます。
通常ですと、産卵率は90%以上だそうです。
つまり、100羽のニワトリがいれば、90羽以上が毎日卵を産むということです。
この育雛場では、導入したヒヨコを、立派な親鳥にして、卵を生産する農場(採卵場)に出荷していました。およそ119日齢で出荷するそうです。
育雛場で働くスタッフは、細心の注意や観察力を払ってヒナを育てていました。
ひな鳥は体力的に弱いので、急激な温度変化ですぐにダメージを受けます。そのため、農場長は、季節の変わり目には、1℃単位の温度管理のために泊まり込みで対応に当たるそうです。
鶏舎の移動も人力であり、何百、何千のヒナをカゴに入れて移すのは、大変な作業だそうです。
ヒナを出荷した後の鶏舎を水洗、消毒、殺菌するのですが、およそ10日程度かけて念入りにきれいにしているとのことでした。
鶏舎が新築同様にきれいになるため、サルモネラ菌などの悪玉菌は常に検出されないそうです。菌がゼロっていうのはものすごいことです。
このように、きめ細かい、真心のこもった管理によって、この育雛場では99%以上の出荷率を保っていました。
つまり、菌がいないので、病気にかかるひな鳥もおらず、病死などで出荷できないひな鳥が1%以下であるということです。
驚愕の数字です!
これが日本の養鶏農家のクオリティなんですね。
スーパーに行けば、1個十数円でかえる卵。
その裏では、コストをギリギリまで削り、ニワトリに愛情と手間をかけている、職人集団がいるということです。