世界的な巨大飼料メーカーのセミナーがありました。
セミナーでは、いくつものトピックスがありましたが、家畜飼料への抗生物質の添加状況の国際比較と、ヨーロッパにおける畜産物に対する消費者の考え方についての話題が興味深かったです。
家畜飼料への抗生物質添加は、家畜の病原微生物への感染を防ぐことで、発育を促進する狙いがあります。
そのため、ここで取り上げる抗生物質は治療目的で使われるのではなく、健康な家畜の飼料に混ぜられるものを指します。ちなみに、日本でも、普通に行われている技術です。
これまでは生産性を上げることは善であり、抗生物質の使用についての規制はありませんでした。しかし、近年、薬剤耐性菌についての研究が進み、その被害の深刻さが認知されるようになってきて考え方が変わってきました。
ひと言でいうと、薬剤耐性菌とは、クスリの効かない菌のことです。
ヨーロッパ諸国の統計が紹介されており、家畜への抗生物質投与量の国別比較のデータなどはとても興味深いものでした。
この手の報告で、いつも取り上げられる、先進的な国があります。
それは、デンマークとオランダです。
どちらも早い時期から抗生物質の家畜への使用を規制し、クリーンな畜産物の生産に取り組んでいます。
日本でも、抗生物質使用に関する規制が始まっていることを付け加えておきます。
次に、ヨーロッパでの畜産物の消費動向についてです。
- ヨーロッパでは、若い層を中心にビーガン(菜食主義者)が広まってきています。
- 環境に配慮し、持続的(サステイナブル)な家畜生産を志向する人々が増えています。家畜、特にウシやヒツジといった反芻家畜は、温室効果ガス(メタン)を排出します。温室効果ガスを出さないような飼育方法は、ヨーロッパの消費者を惹きつけます。
- 温室効果ガスの排出量の多い牛肉を一切使わないハンバーガーや、オーガニック(有機)畜産物が注目を集めているとのことでした。
- 抗生物質を使わず、環境へ配慮した飼い方で育てられた家畜から得られる肉、ミルク、卵が、強いインパクトを持って流通していることが強調されていました。
大手スーパーチェーンやファストフード店も、この動きを積極的に取り入れているそうです。
日本では、大きな流れにはなっていませんが、ヨーロッパの動向には敏感になっておく必要があるように感じました。