乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

1人でも80歳まで牛飼いをできる牛舎

とても素敵な牧場を見学してきました。

別海町でご両親と後継者の3人で経営している酪農場です。

経営者のKさんは、私よりもだいぶ若い方で、独特なアイデアを実現しているとても魅力的な方でした。

 

育成牛や乾乳牛はご両親が管理していて、約100頭の搾乳牛はKさんが1人で管理しています。

 

1人で牛飼いをしながら、趣味の時間や札幌での用事を済ませるために、可能な限り省力化された牛舎になっていました。


牛舎内を案内いただいているときに、名言がポンポンと飛び出します。

「80歳になっても1人で管理できる牛舎にしたかった」
「自分が牛なら住みたいと思える牛舎が理想」

 

木造で天井が高い牛舎は、明るく、ゆったりと空気が流れています。
牛舎から出た後も、衣服に匂いの付かない、心地よい空間でした。

段差が少なく、足への負担を最小限に抑えています。

 

広々スペースに、搾乳ロボットが2台。

自動給餌器で配られる新鮮なエサを常に目一杯食べているのでしょう、ウシたちの左側の腹(ルーメンのあるたり)はパンパンに張っています。

寝床や通路は、牛の蹄を守り、快適性にとって重要なので、ケチってはいけないという考えから、牛床はフワフワクッションのゴムマット、通路はグリップの効いたゴムマットが、敷き詰められていました。

 

「1年中同じ環境の中で牛に生活してもらいたい」
というポリシーで、換気や照明にも設備投資して、365日間の安定した空間を生み出していました。温度によって自動で開閉される牛舎壁に設置されたカーテンや、巨大な換気扇。日照時間によって調節される、やんわりと温かい照明。

 

牛のため、自分のために、快適性と効率が追求された牛舎でした。

 

私は考えます。
真面目でガンバリ屋さんは、「自分のため」を忘れがちになりがちだよな-、と。
私の両親などは、その典型で「子供のため」に、「自分はガマン」して生きてきました。
息子の私は、感謝はしましたが、子供心に重荷も感じていました。

もっと遊べばいいのに、と

 

そんな私には、Kさんの自分も人生を楽しむという考えに、チョー共感しました。

 

私にとっては、お金よりも時間の方が大切です。

お金で時間を生み出せるなら、そのための投資は惜しみません。

Kさんも、同じ価値観かなと、想像しました。

 

Kさんは、「牛だって自分の好きなように行動しているだろう」という考えの持ち主でした。少しばかり他の牛と変わった行動をしていても、目くじら立てず、許容していました。良い意味での牛まかせが、ハイテクな牛舎環境と溶け合って、牛たちはみな健康そうでした。

 

牛もヒトもハッピーな牛舎は、とても眩しく感じました。

 

こんな素敵な、酪農場を案内してくれた、根室青獣の事務局のみなさんにも感謝です。

良い出会いのあった週末でした。

洋梨の花