乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

今日の牛乳はおいしい

私の大学では、学内牛舎で生産された牛乳が販売されています。

「健土健民牛乳」という名称です。

 

この牛乳、教授会では出席する教員に配布されます。

 

定例の教授会は月1開催なので、毎月、定期的に大学牛乳を飲むことになります。

これとは別に、我が家では、冷蔵庫に欠かさず備えられています。

我が家では価格重視なので、成分無調整牛乳と低脂肪や脂肪分の少ない加工乳が半々くらいの比率でしょうか。

 

乳脂肪が低いと、スッキリした口当たりになります。
(水っぽいともいえるかもしれません)

 

そのような牛乳ライフですが、先日、驚く経験をしました。

 

教授会でもらってきた大学牛乳が、あり得ないほどクリーミーでおいしかったのです。甘みの少ないソフトクリームを溶かして飲んだような、といえば良いでしょうか、今までに経験のないおいしい牛乳でした。

 

通常、市販の牛乳は数多くの酪農家の牛乳が、乳業メーカーの工場で合乳されて、パックに詰められ販売に回されます。


つまり、個性的で“とんがった”味の牛乳があっても、その他大勢の酪農家の牛乳混ざることで、薄まってしまい、標準的な味になってしまいます。

 

一方、大学の牛乳は、一件の“酪農家”の牛乳になります。
味の変化がダイレクトにパック詰めされます。

今回、教授会で配布されたロットがパック詰めされたときの生乳が、乳成分のバランスが良く、極めておいしい時期に当たったのでしょう。

(ちなみに自画自賛ですが、この牛たちのエサのメニューを考えているのは私です(^^;))

 

牛乳は、当然ながら、牛という生き物から搾り取るモノなので、牛の体調によって成分は大きく変動します。乳成分が大きく変動するということは、牛乳の味覚も、その時々で千差万別ということを意味しています。

 

本学の校歌に相当する「酪農賛歌」では、牛のことを「乳房持つ神」と歌っています。

牛という生き物から搾られる牛乳ですから、おいしい牛乳、風味の良い牛乳、時においしさのイマイチな牛乳と、時期によって変化するのです。

 

今回は、むちゃくちゃおいしい牛乳を飲みながら、改めて牛乳は工業製品ではない、生き物なんだと実感しました。

 

最後になりますが、現在、停電で搾乳や飼養管理に悪戦苦闘している千葉の酪農家や関係機関のみなさまにお見舞い申し上げます。

生き物から搾られる牛乳なので、停電で販売に回せないからといって、搾らないことには生きません。ボタン一つでストップすることはできないのです。

私のゼミ生や卒業生も、何人も千葉県で酪農を営んでいます。
少しでも早い復旧をお祈ります。

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