乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

実験の分析で悪戦苦闘しました

今日から東京出張です。
午前中は、大学でゼミ演習と研究打合せをしてきましたが、ゼミ室で学生がストーブを焚いていました。
東京はまだ半袖。。。

 

さて、この春から、私の研究パートナーとして、家畜飼料学のD助教が着任しました。

卒論研究の一環で、彼とともに、新しい分析に取り組んできました。
新しい飼料の消化性を評価するいうものです。

 

牛は、エサを食べると、第一胃(ルーメン)での前発酵(一次消化)と、我々ヒトと同じ小腸での消化・吸収(二次消化)を行います。

この2段階の消化によって飼料が分解されるので、ヒトのような単胃動物よりも飼料の利用効率が高くなります。


別の表現をすると、牛が草のような粗末なエサを食べて、ミルクのように高栄養な畜産物を大量に生産できるのは、2段階消化によってエサの栄養分をギリギリまで吸い上げることができるからです。

 

さて、新規の飼料の栄養価を評価するとき、この2段階の消化のプロセスでどの程度分解されるかを知る必要があります。

 

この消化の過程を実験室内で再現しようとすると、やや複雑な行程となります。
飼料をルーメンで培養し、一次消化を行います。

一次消化で溶け残った残渣を、今度は消化酵素を溶かした液体で培養します。こちらは二次消化を再現したもので、第四胃と小腸での消化を試験管レベルで行います。

 

私たちも経験のない新しい分析なので、過去の国内外の論文で手順を学びました。

試薬や器具は、手元にないものは購入しました。

 

今回対象としたのは、栄養素は豊富に含まれているが、これまでは廃棄されてきた、ある副産物で、企業とのコラボレーション研究です。

第1段階の消化性評価は済み、第2段階の分析をすすめてきましたが、こちらが失敗が続きで苦労しました。

D助教も、深夜や休日返上で分析に取り組んでいました。

デリケートな分析なので、なかなかクリアな結果が出ません。

私たちの手技が未熟なのも関係していたでしょう。

 

ですが、その苦労も、今日で峠を越しました。
今朝まで私が分析し、彼にバトンタッチしてきた結果が、メールで送られてきました。エクセルを開くと、許容できるレベルの良好な結果を得ることができていました(^^)


研究とは、失敗にめげずに、成果を得るまでやり続ける根気が必要だと改めて実感しました。
D助教も、この試練を乗り越えて、一段階成長できたことと思います。

 

新人には少しタフだったとおもいます。ですが、筋トレが少し負荷をかけないと筋肉が肥大しないように、仕事も適度な負荷がないと成長しないでしょう。
まずは、お疲れさまでした。

 

アルバータ大学のラボ(分析は有料で請け負ってくれるとのこと!)

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