乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

外来語、特にラテン語を日本語で伝えるのが難しいのです

外来語を多用するお方は世間様から批判されがちです。

某首都の知事さんなど、コロナ関連の会見では外来語を頻繁に口にします。

 

僕たちのような研究職は、学生や農家さんの前で授業や講演をするわけですが、外来語や英語表記の略称をそのまま使う方も珍しくありません。


専門家になると、外来語や英語の略語が当たり前になっちゃっていて、その言葉を知らないヒトがいることを知らないという複雑な状況なのではないかと想像しちゃいます。

 

僕は、若い頃に、専門語を知らないヒトたちの側にいたわけでして、大教授が授業で繰り出す難しいコトバについていけず睡眠学習に突入する経験を日常的にしてきました(^^;)

 

という、落ちこぼれ経験が染みついているので、僕が講義をするときは、イキなり外来語や略語を使わず、ひと言解説してから使うように心がけています(勉強熱心な方には回りくどいかもしれませんが)。

 

さて、そんな自分でも、現在苦戦する事態に陥っています。

さる組織から、ある乳成分と牛やルーメン(第一胃)の健康状態の関連について、初心者でも理解できる解説書を書いて欲しいという依頼を受けました。

テーマは、最近、乳牛栄養学の分野で注目されている脂肪酸についてのお話しです。

脂肪酸とは、乳脂肪(中性脂肪)を構成する栄養成分なのですが、その由来(出どころ)によって大きく二つに分けられます。

 

一つは、ルーメン微生物が飼料を発酵するときに作られる脂肪酸
二つ目は、エサに含まれていたり、体脂肪(皮下脂肪や内臓脂肪)に蓄えられていた脂肪由来の脂肪酸

 

ここでやっかいな事態になるのが、これらの呼び名です。

 

一つ目を、de novo(デノボ)脂肪酸
二つ目を、preformed(プレフォームド)脂肪酸といいます。
(さらに、1と2を合わせたmixed(ミクスド)脂肪酸というものまであります・・・)

 

これ、カタカナ表記になおしたところで混乱しますよね。。。

デノボなんて、全くイメージが湧かないコトバです。

語源はラテン語だそうです。。。

 

これ、身近なところに置き換えると次のようなイメージでっす。

僕は、健康診断が気になるお年頃ですが、コレステロールについての結果が悪い数値だったとします。

しかし、コレステロールには善玉と悪玉があり、基準よりも高い数値で困るのは悪玉の方です。

 

HDLコレステロールが標準より高いですよ、LDLコレステロールは標準範囲内でしたよ」と指摘されたとして、すかさずHDLって悪玉だっけ?善玉だっけ?LDLはどっち?とほとんどのヒトが一瞬混乱するのではないでしょうか。
(ちなみに、HDLは善玉コレステロールです。なので、総コレステロールが基準値内であれば、善玉が高い分にはそれほど問題になりません)

 

これと同じことが、デノボとプレフォームド、そしてミクスドにも当てはまります。

 

これらを、そのままのコトバで解説書を書いていっても、読者はデノボ?プレフォームド?と、?マークの連続で理解を深めるのに時間がかかるものと推察します。

寝る前の枕元で読むのであれば寝付きが良くなって良いかもしれませんが(^^;)

 

それを思うと、善玉や悪玉とは、どなたがお考えになられたのかわかりませんが、その機能や意味を端的にあわらす素晴らしい表現だと思うわけであります。

 

まだ締切まで間がありますので、年末年始に美味しい料理とお酒で頭を柔らかくして、誰でもイメージが湧く表現を探したいと思うわけです。

 

↓カミサンがリンゴアレルギーで食べられない僕のために作ってくれた煮りんご

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