乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

イヌのエサ設計:複数フードを組み合わせて給与

我が家に愛犬ミカンがやってきて、はや3ヵ月がたちました。
カミサンはミカンをネコッかわいがり(イヌかわいがり?)しつつも、シツケに余念がありません。

ムスコ君は、毎日のトイレシートと水交換を欠かさずやっていて、生き物を飼うことの責任感がヒシヒシと伝わってきて、良い意味で驚いています。

 

さて、12月生まれの小型犬のミカンさんは、スクスクと成長してこの3ヵ月で1.5kgくらい増体しました。

ここで、カミサンと「あーでもない、こーでもない」と議論になるのが、エサの種類や与える量です。

子ども時代にイヌを飼った経験のある二人ですが、どちらもご飯を汁で煮込んだネコまんま(イヌまんま?)を与えていた世代なので、ドライフードのことはよくわかりません。

 

離乳期の高栄養で高額な(-_-)フードをやっていますが、大きくなってきたミカンさんに対して、いつまでそれをやり続けるのか?増体に応じてどれくらいエサを増やしていけば良いのか?

夫婦で、日々モンモンとしていました。

 

そこで、ウシの栄養屋である自分が、イヌのエサ(栄養)管理についても調べることになりました。

 

調べてみて驚いたのが、NRC飼養標準というウシの栄養計算についてのアメリカの教科書に、イヌ・ネコ版もあったことです。

さらに、イヌ・ネコの世界ではNRC飼養標準に加え、AAFCO養分基準というこれまたアメリカの教科書もあるそうです。

これら教科書を用いると、イヌの体重、月齢および活動量(発育段階)をもとにカロリー(エネルギー)とタンパク質の必要量を計算できることもわかりました。

 

ウシでは、エネルギーとタンパク質の2大栄養素に加えて、繊維質やデンプン質といった炭水化物を別途考える必要がありエサ設計は複雑です。

一方、肉食メインのイヌでは炭水化物はあくまでも補助的栄養素なので、タンパク質中心のシンプルなエサ設計で良いようです。

 

必要と思われる情報を入手したところで、エクセルで体重、月齢、活動量を入れると必要なカロリーとタンパク質量が計算できるシートを作りました。

 

手順としては、次の通りです。
1 犬に必要なエネルギーとタンパク質の量(要求量)を計算する式をつくります
2 ドッグフードの栄養成分表にあるカロリーとタンパク質含量に給与量をかけて、エネルギーとタンパク質の供給量を計算する表をつくります(このとき、複数のフードの値を合計できるように表をつくります)
3 2の供給量÷1の要求量×100をして、必要な量を満たしているかどうか(100%に達しているかどうか)計算します

文字で書くとイメージが湧きませんが、普段エクセルを使っている方ならそれほどハードルは高くありません。

 

計算の結果、高タンパク質な離乳期フードのみではタンパク質が過剰で、エネルギーが不足することがわかりました。逆にカロリーの必要量をあわせようと給与量を増やすと、タンパク質が過剰になります。

 

そこで、タンパク質含量の低い(価格も安い(^_^)v)ドッグフードを買ってきて、二つを組み合わせて計算してみました。

その結果、2つのフードを組み合わせることで、カロリーとタンパク質の必要量を単独よりは適切な値に近づけることができました。

 

ウシのエサ設計と同じような考え方で、簡単な栄養計算ができることがわかりおもしろかったです。

犬の飼料設計、栄養の知識と算数の技術がちょっぴり必要ですが、それほど難しくないので、興味のある方はトライしてみてはいかがでしょうか。

↓2種類のエサをブレンド

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