乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

即断即決する仕事と待ってくれる仕事

最近、交友関係が広がり、様々なプロフェッショナルな人たちと公私ともにお世話になる機会が増えてきました。

 

臨床獣医師や業者の現場対応する部署の方などとお話しをするにつけ、こういった職種のキモは即断即決する決断力なのだなあと感じます。

 

獣医師が病畜の治療を開始したら、絶対に最後までやり遂げないといけません。
腹をメスで開いてしまったら、どんな難症例でも手に負えないからと投げ出すわけにはいきません。

どれだけ孤独に感じても、自分の力で解決しなければいけないのです。

 

乳牛のエサ設計を担当する職種の方であれば、顧客から乳量が減少した、乳脂率が下がったと言われれば、すかさず対応しなくてはいけません。

何らかの対処法を即座に提供しなければいけません。

暑熱ストレスなどは、もたもたしていると涼しくなってしまいますので。

 

僕は最近よく思います。
決断くらい難しく、ストレスになるものはないことに。

小学生の息子をみていると一目瞭然です。

学校に行けば自動的に授業が始まるので楽チンですが、コロナ休校などで自宅で大量の課題をこなすのはとてもストレスです。

親の「勉強しなさい」という号令で背中を押してもらわないと、自力で始めることができません。

これなども、勉強を始めるという「決断」を、自分ですることの難しさを表しています。

 

よくビジネスの現場では「指示待ち人間」という言葉が使われます。
指示されなければ動けない、指示されたことしかこなせない、そのようなヒトを指した表現だと僕は理解しています。
これなども、決断して自分で動くことの難しさを端的に示した言葉ではないでしょうか。

自分で考えて、自分で決断することが苦手なヒトが多いということなのでしょう。

 

現場対応する職種の人たちは、顧客からの問い合わせや、助けを求める声に多くは自分の力だけで、かつ瞬時に対処していかなければいけません。

いくつかある自分の考えの中から、一つを選択して、行動に移すという決断を提示しなければいけないのです。

これは、なかなかにストレスがたまります。

知識や経験が少ないと選択肢自体が限られてしまうからです。

(僕も以前は牛群のエサ設計で眠れない夜を幾度となく過ごしました。プレッシャーに押しつぶされそうにもなりました)

 

ただ、これを楽しめるヒトも世の中には存在します。
自分の実力を発揮することで、成績や評価が上がることに、生きがいを感じられるヒトです。

でも、こういったビジネススタイルで一流になるためには、膨大な勉強と、数え切れない失敗が必要でしょう。

プレッシャーに負けず、失敗にも折れない心といった、強靱な精神力が求められます。

 

研究者は、ある程度長いスパンで仕事(研究)に取り組めるので、瞬発力的なプレッシャーはそれほど多くない職種かもしれません。

論文執筆などは書き始めから出版されるまで1年ほどかかることも珍しくありません。

研究職は、粘り強さや根気が求められますが、ある程度待ってくれる仕事といえなくもありません。

 

シューティング系のゲームが現場対応系の職種としたら、研究職はロールプレイング系のゲームかもしれません。

 

これから就職を考える学生たちには、瞬間的に決断する職種を好むのか、粘り強さは求められるけど待ってくれる職種を求めるのか、自分のタイプをしっかり見極めて欲しいです。

早期の離職といったことのない選択をしてもらいたいと、心から思っています。

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