近々、僕が講演をする講習のテーマが「ルーメン(第一胃)と乳成分」の関係についてです。
ウシが乳房で乳成分、特に乳脂肪を作る上で、酢酸という有機酸が重要なカギとなります。
そんなわけで、調べ事をしていて、興味深い論文に出会いました。
酢酸を泌乳牛のルーメン(第一胃)に注入するという実験をまとめた論文です。
その論文では酢酸についての様々な機能が解説されており勉強になりました。
Urrutia and Harvatine, 2017. Acetate Dose-Dependently Stimulates Milk Fat Synthesis in Lactating Dairy Cows. Journal of Nutrition.147:763-9.
以下に、論文に書かれていた情報を、自分の整理のためにまとめました。
乳脂肪という物質には、脂肪酸が含まれています。
脂肪酸とは炭素(C)がいくつもくっついた物質です。
乳牛では乳脂肪中の脂肪酸の半分を乳腺細胞で作り、残りの半分を血液から取り込みます。血液から取り込む脂肪酸は、そのまま利用できる、あらかじめ完成した脂肪酸です。前者をデノボ脂肪酸といいます。
ちなみに、酢酸は炭素が2個、酪酸は炭素が4個くっついた物質です。
これら二つの酸は、ウシが食べたエサを、ルーメン(第一胃)内に棲む微生物がエサとして利用(発酵)するときに発生します。
なかでも、酢酸は、乳腺細胞内でデノボ脂肪酸がつくられるときの炭素(C)の大部分を供給します。同時に、脂肪酸合成のために乳腺細胞が必要とするエネルギーの半分が酢酸から供給されます。
ウシは、乳脂肪合成だけでなく、生命活動全般に必要なエネルギーのうち、実に70%をルーメン発酵で作られる短い脂肪酸(炭素数が5以下)から獲得します。
酢酸は、ルーメンから吸収される短い脂肪酸の60%を占め、脂肪酸の代謝によって生じるエネルギーの45%を供給します。
血液中に吸収された酢酸の半減期は1~4分と早く、急速に代謝され二酸化炭素になり、エネルギーとして利用されます。
つまり、酢酸は急速にエネルギーとなる、即効性のある栄養素だというわけです。
酢酸は、酪酸にもなります。
ルーメン微生物の発酵で作られる酪酸ですが、そのうちの56%は微生物によって酢酸から変換されたものであるそうです。
ここで紹介したのは一部ですが、酢酸についての役割、機能が詳細に記載された論文でした。
酢酸は、食用の「酢」の主成分です。
酢酸のエネルギーとしての役割、体内で燃焼を促進する機能は、ヒトでもおおむね同じです。代謝促進に、酢が良いというのは理にかなっているのです。
ウシは酢をエネルギー源として活動し、酢を材料に乳脂肪を作っているということがよくわかる論文でした。
↓今年のドカ雪、ハンパなかったです。週明けもドカ雪になるのかな~