乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

第四胃にこぶし大の塊ができる?!

先日の午前中、十勝管内の獣医師から僕の携帯電話に着信がありました。

 

第四胃にボール状の塊(以降、胃石と呼びます)ができた牛が診療所に搬入されたので、これから開腹手術をするという内容でした。

 

彼女からは、以前からこの件で連絡をいただいており、胃石についてルミノロジー的な見地からアドバイスをいただけないかという相談を受けていました。

 

胃石は特定の牧場で発生するとのことで、少年野球のボール大から、メロンや小ぶりのスイカくらいまで様々な大きさのものができます。

それらの胃石が複数個形成され、第四胃の出口を塞いでしまうのです。

そうなると、牛はエサを食べられなくなり、最悪のケースでは死にいたるそうです。

 

大学から診療所までは、高速を飛ばして3時間弱の行程です。

昼から走って、戻りは夜遅くなるのは確実です。

電話口で一瞬逡巡しましたが、一生に一度のチャンスかもしれないと思うと、行きますという言葉が口をついて出ていました。

 

手術台に載せられてひっくり返された成牛の開腹手術、第四胃から取り出された胃石、その後に訪れた発生農場での聞き取り、全てが刺激的でした。

 

発生農場ではエサや牛舎環境に特別異質なことは認められず、なぜ年に数頭も胃石が形成されるのか謎は深まりました。

 

農場主と連絡をくれた獣医師には胃石を大学に持ち帰り、様々な角度から分析をすることを約束して、帰路につきました。

 

絵に描いたようなトンボ返りで、往復400km以上の道のりでした。

ロングドライブで身体は疲れましたが、思い切って訪問した甲斐はありました。

 

胃石の分析で、発生のメカニズム解明に通じるヒントが見つかることを期待しています。