知的障害を持つ方たちの就労場所については、保護者の方にとって切実な問題です。
僕の周りにもそのようなお子さんを持つ親御さんがいて、悩みを耳にする機会があります。
同僚のY教授は、畑作物の栽培を専門にしていますが、農業生産の現場で知的障害者の就労機会についての活動も積極的に進めています。
ちなみに、このような取り組みを農福連携とい呼びます。
そんなY教授から、酪農の現場でも知的障害を持った方たちが働く場を設けることはできないかという相談を受けました。
酪農場では、大型機械を操作したり、大きな乳牛を引っ張ったり、搾乳したりといったパワーや経験の必要な作業が多いです。
一方で、衛生的な飼育環境を確保するために、掃除や洗浄といった地道な軽作業も欠かせません。
衛生状態が悪い環境で飼育すると、特に子牛のように体力のないウシたちはてきめんに体調を崩します。
先日訪れた牧場でも、一見すると換気の良い哺育施設でしたが、何頭もの子牛が咳き込んでいました。
哺乳に用いるバケツやゴム製の乳首はきちんと洗ってやらないと、すぐにヌルヌルになり、真っ黒なカビがはびこります。
そんな哺乳機器でミルクを飲んでいたら、子牛が下痢してしまっても不思議はありません。
また、親牛の方も、遠くに散らばってしまったエサは掃き寄せしてやらないと、エサに口が届きません。
エサ押しの効果は絶大で、そのためのロボット(自動エサ押し機)も販売されているくらいです。
ただし、エサ押しロボットは数百万円以上もする高い投資なので、誰もが導入できるわけではありません。
ここで挙げたような清掃、洗浄、エサ押しなどの作業は、そんなに複雑ではなく、家畜に触れる場面もないので危険性は低いです。
酪農に慣れていない初心者でも簡単に従事できます。
こういった作業に、福祉施設に在籍する方たちが送迎されながら取り組むことで、賃金を得るというシステムを作れないか、というのがY教授からの相談の中身です。
すでにJA標津では、福祉事業所と酪農家の連携システムが動き始めているということも教えてもらいました。
酪農場の人手不足は深刻で、外国人を広く募集してなんとか経営を回しているという実情があります。
(昨日訪れた牧場ではフィリピンの方が一生懸命作業していました)
そのような背景でもありますので、酪農生産現場での農福連携の可能性を探ってみるというのはいかがでしょうか?
夢のあるおもしろい事業になりそうに感じています。
↓この子も盲導犬の卵、福祉の現場で活躍します