乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

研究

ミャンマー人から聞いた中国の大学の底力

先日、タイのバンコクでミャンマー人の友人ミンさんと会ってきました。 彼はミャンマー獣医科大学の准教授をしていますが、現在はタイに滞在中で、今を逃すといつ逢えるかわからないということでの対面でした。 お互いの研究についての情報交換をしました。 …

第四胃にこぶし大の塊ができる?!

先日の午前中、十勝管内の獣医師から僕の携帯電話に着信がありました。 第四胃にボール状の塊(以降、胃石と呼びます)ができた牛が診療所に搬入されたので、これから開腹手術をするという内容でした。 彼女からは、以前からこの件で連絡をいただいており、…

クラウド上のデジタルデータのコワさ

測定したデータの一部が消えてしまいました。 研究をする際に、データはお金には換えがたい、貴重な財産です。 紙ベースで記録したものや、エサなどのサンプルは長期間保管可能ですし、実際そうしています。 しかし、データは物理的に保管できるものばかりで…

学外に出てのコラボレーション研究

大学にいると、企業や酪農関連団体と一緒に研究する機会があります。 僕は、企業からの提案で大学内で試験をするというのは珍しくありませんが、他の研究機関とのコラボレーション研究は、それほど多い方ではありませんでした。 ですが、最近は少し方針転換…

対面での学び 内地型酪農視察と研究打合せ

今週は、少し長い出張でした。 コロナ騒動以来、初の津軽海峡超えです。 前半は群馬県の酪農場を視察し、後半は東京で研究打合せやJGAPの研修を受けてきました。 群馬の酪農視察のメインテーマは、内地型酪農の飼料給与法について学ぶことでした。地元で活躍…

「無から有を生み出す仕事」

今期の直木賞作家、馳星周氏は北海道出身です。 僕も彼の代表作「不夜城」を読み、ハードボイルド小説の分類に、少しなじめず距離を置いていました。 今回、彼が直木賞を受賞したことで、改めて手に取ってみようかなと思っています。 蛇足ですが、直木賞受賞…

「無から有を生み出す仕事」

今期の直木賞作家、馳星周氏は北海道出身です。 僕も彼の代表作「不夜城」を読み、ハードボイルド小説の分類に、少しなじめず距離を置いていました。 今回、彼が直木賞を受賞したことで、改めて手に取ってみようかなと思っています。 蛇足ですが、直木賞受賞…

子牛の離乳食、スターター

今年、新規の取り組みとして、子牛のスターターに関する研究を行っています。 スターターとは、ヒトの離乳食にあたるものです。離乳食といっても、ドロドロの流動食ではなく、ペレットタイプの配合飼料になります。 子牛は産まれてからしばらくはミルクのみ…

peNDFとルーメンマットの関係

乳牛栄養学の大先輩と専門的なディスカッションをする機会がありました。 それは、物理的有効繊維(peNDF)についてです。 「ウシは、反芻をすることで、唾液をルーメン(第一胃)に送り込み腹の調子を整えています。 唾液はアルカリ性なので、胃薬と同じ効…

新しい飼料が開発され、売られるまでの道のり

今年、私たちの研究室では、企業とともに新しい飼料開発に取り組みました。 今回のテーマは、道内産の未利用の資源を飼料として使えないかというものでした。 ターゲットとしたのは、道内の農産加工場で大量に排出される未利用の資源で、通常は産業廃棄物と…

酪酸の効果:泌乳牛に酪酸を与えてみると・・

酪酸という脂肪酸があります。 脂肪酸とは、炭素と水素がいくつもつながった物質で、中性脂肪の材料となります。中性脂肪は、脂肪酸が三つくっついてできます。 酪酸は、炭素が4個くっついた脂肪酸で、比較的小さな分子です。小さな分子なので、空気中にも揮…

商品開発の難しさ:酪農関連の飼料や添加剤の場合

ここ最近、弁当ブログのようになっています。しかも、そちらの方が評判が良いという・・(^^;) たまには、マジメに酪農のお話しをしましょう。 乳牛の飼料や添加剤(サプリメント)は、様々な製造メーカーが商品化して売り出すためにしのぎを削っています。 …

論文発行、嬉しさが染みいります

昨年の今頃、牛舎で卒論研究に邁進していました。 学生とともに夜討ち朝駆けで、牛舎に日参し、データ整理も同時に進めました。 学生の卒論とは別に、私自身も間髪入れずに論文執筆に取りかかり、GW明けには投稿まで持っていきました。 投稿先は、酪農業界の…

実験の分析で悪戦苦闘しました

今日から東京出張です。午前中は、大学でゼミ演習と研究打合せをしてきましたが、ゼミ室で学生がストーブを焚いていました。東京はまだ半袖。。。 さて、この春から、私の研究パートナーとして、家畜飼料学のD助教が着任しました。 卒論研究の一環で、彼とと…

自分で自分の仕事のテーマを見つけるのが仕事

複雑なタイトルですが、大学教員の仕事のすすめ方をひと言で表すと、このような言い方もできます。 大学の研究室体制には、大きく二つの形態があります。 一つは講座、ユニットといった、複数教員がチームで活動するスタイルです。一般には、○○学研究室とい…

畜産の研究者が進む道

大学時代の先輩と食事をしました。同業の先輩と話しをする中、改めて畜産研究者として意識し続けなければいけないことを考えました。 現代の研究者は、研究成果を学会で発表したり、論文として公表することを求められています。このためには基礎的な、学術的…

2019アメリカ酪農学会報告

今回のアメリカで開催された学会ですが、酪農科学学会という、乳牛専門の学会になります。 日本では、私たちが所属する最大の学会は日本畜産学会なので、乳牛、肉牛、ブタ、トリなど畜産全般が対象となります。 乳牛専門の学会があるということからしても、…

猛烈インプットした先に現れたもの

私がブログを書くときは、テキストエディタを使います。ブログ用にテクストエディタを開くのがとても久しぶりのような気がします。 前回の更新が5/5なので、10日ぶりです。このブログを始めてから、最も長い空白期間ではないでしょうか。 私は5月の中旬まで…

うれしい論文受理報告

3年前、私の研究室にミャンマーからの留学生ミンさんが在籍していました。 彼は、母国では獣医の資格を有する大学教員で、本学留学中は免疫と乳生産についての研究に取り組みました。 当研究室に在籍していた時から精力的に研究成果について取りまとめ、帰国…

ルーメン液の発酵酸は、ガスクロマトグラフで分析します

中学くらいの理科で習う実験方法に、クロマトグラフがあります。 色の付いた何種類かの液体を溶かした溶液を用意します。そこに細長い短冊状の紙(ろ紙)を浸してやると、紙の上の方に色水が上がってきます。 色水の種類によって、紙のどこまで上昇するかが…

スマート酪農による牛群管理

明後日1/23は大学の卒論発表会があります。今年の私の研究室では、4課題の卒論発表があります。 テーマの一つにスマート酪農に関するものがありますので、今日はその紹介をいたします。 乳牛群を適切に管理するためには、様々な情報を整理、集計する必要があ…

2018年、仕事の棚卸し

年明け、日々の仕事が、なかなか充実しています。 先週から今週にかけて、4社の企業の方とミーティングの時間を持ちました。 新しい研究の芽であったり、すでに成果の出た研究の果実だったり、と実りのある意見交換の時間になりました。 また、私のゼミの卒…

大学教員の醍醐味 いつでも学べることのありがたさ

帯広に来ました。ウシのエサに関する研究グループの会議に参加するためです。 私は、そのグループのメンバーではないのですが、新しいエサの取り組みについての検証を依頼されました。そこで、研究室の3年生たちと、検証実験を行いました。その成果について…

飼料の物理的有効度を調べるには? ペンステートパーティクルセパレーター(PSPS)

今日は酪農の技術的な話です。 牛には、反芻するという、大切な仕事があります。反芻とは、一度食べたエサを吐き戻し、細かくなるまで再度咀嚼する活動です。 どれくらい細かくなるまで、反芻を繰り返すかというと、ヒツジでは約1mm、牛では数mmと考えられて…

畜産の研究のバランス感覚 現場と研究室のはざま

今日、嬉しい電話が届きました。 数年前から研究をともにしてきた、宮崎県の獣医師A先生から電話があったのです。 この春から、仕事を続けながら、宮崎大学の博士課程に入学したという連絡でした。 彼は、牛の治療や飼育管理に、私が専門とする研究の視点を…

乳牛のルーメン内容物は、堅く詰まっていればよいのか?

今日は、酪農のテクニカルな話しです。 最新号の、酪農技術雑誌「デーリィマン5月号」に、私の書いた原稿が掲載されました。 乳牛に、乳を大量に生産してもらおうとすると、穀物を多く与えなくてはいけません。 穀物は、エネルギー価が高く、牛に与えると乳…

エサの栄養価、その値はどのように求めているのでしょうか?

私の研究、教育以外の大きな仕事として、農場の乳牛群の飼料設計があります。 牛の乳生産に合わせて、エサのメニュー(配合割合)を決めるというものです。飼料設計は、ルーチンワークではありますが、研究的側面も含まれています。 先日、現在使用している…

チームビルディングと、チームの底力

個人よりも、チームの方がすぐれていること、 信頼できるチームを作るのは、そんなに難しいことではないこと、 たまたま、チームというものについて、二日続けて、実感する機会がありました。 今年、私の研究分野では、超大物の、カナダで活躍するO教授が、…

原稿執筆:反芻の新しい考え方

新学期の始まりです どこの職場も新年度は、多少なりと緊張感を持って仕事がスタートしますよね。 大学では、3月までは、比較的自己に向かう仕事中心のスタイルが可能でしたが、4月からは当然ながら、学生に向かう仕事中心のスタイルにガラッと変わります。 …

現場で役に立ってこその研究

今週は学会ウイーク。 今日まで熊本で、日本草地学会に参加していました。 熊本は、桜が満開です。今は、東京に向けて移動中です。 (羽田でアクシデント。滑走路に穴?!なまら遅れました。。。) さて、草地学会で、ひとつおもしろい発表がありました。 牧…