乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

飼料

ウクライナ危機と家畜飼料の関係

オルテック・ジャパン社が定期配信しているニースレター『オルテック・アップデート』があります。 今日(3月7日)配信の号に、ウクライナ・ロシア紛争とヨーロッパの家畜飼料についての考察が掲載されていました。 ************オルテック・ア…

サイレージ発酵を失敗する二つの誘惑

酪農の世界では牧草やトウモロコシ(ここでいうトウモロコシは茎、葉、実をあわせたものです)を、最小の労力やコストで、高品質かつ長期間保存できるような形にするかということが大きなテーマとなります。 牧草やトウモロコシをあわせて粗飼料といいます。…

飼料設計と給与法に関する技術書が出ました

今年度2冊目の、僕が監修をした酪農技術書が出版されました。 本書は、飼料栽培や収穫、飼料設計の考え方、乳牛の生育ステージごとの栄養管理のポイント、飼育環境、機械や経営面の注意点など、「飼料設計と給与法」に関する幅広い分野を網羅した教科書にな…

飼料設計と給与法に関する技術書が出ました

今年度2冊目の、僕が監修をした酪農技術書が出版されました。 本書は、飼料栽培や収穫、飼料設計の考え方、乳牛の生育ステージごとの栄養管理のポイント、飼育環境、機械や経営面の注意点など、「飼料設計と給与法」に関する幅広い分野を網羅した教科書にな…

飼料設計と給与法に関する技術書が出ました

今年度2冊目の、僕が監修をした酪農技術書が出版されました。 本書は、飼料栽培や収穫、飼料設計の考え方、乳牛の生育ステージごとの栄養管理のポイント、飼育環境、機械や経営面の注意点など、「飼料設計と給与法」に関する幅広い分野を網羅した教科書にな…

副産物飼料にもコロナ禍:醤油粕

乳牛の飼料、メインの飼料原料として4種類あります。 ・牧草や飼料用トウモロコシといった粗飼料 ・トウモロコシや大豆、麦といった濃厚飼料 ・ヒト用の食料生産過程において産み出される副産物飼料 ・ミネラルやビタミン、機能性を持った栄養補助飼料といっ…

peNDFとルーメンマットの関係

乳牛栄養学の大先輩と専門的なディスカッションをする機会がありました。 それは、物理的有効繊維(peNDF)についてです。 「ウシは、反芻をすることで、唾液をルーメン(第一胃)に送り込み腹の調子を整えています。 唾液はアルカリ性なので、胃薬と同じ効…

気候変動と酪農

先週末、札幌で開催された酪農シンポジウムに参加してきました。 テーマは、気候変動と酪農現場のリスク管理でした。主催は雪印メグミルクの酪農総合研究所です。 気象予報士の講演では、北海道の年平均気温がこの100年で1.59℃の、日降水量70mm以上の豪雨の…

新しい飼料が開発され、売られるまでの道のり

今年、私たちの研究室では、企業とともに新しい飼料開発に取り組みました。 今回のテーマは、道内産の未利用の資源を飼料として使えないかというものでした。 ターゲットとしたのは、道内の農産加工場で大量に排出される未利用の資源で、通常は産業廃棄物と…

商品開発の難しさ:酪農関連の飼料や添加剤の場合

ここ最近、弁当ブログのようになっています。しかも、そちらの方が評判が良いという・・(^^;) たまには、マジメに酪農のお話しをしましょう。 乳牛の飼料や添加剤(サプリメント)は、様々な製造メーカーが商品化して売り出すためにしのぎを削っています。 …

牧草の切断長問題

同僚とともに、大学のある江別市の酪農家を訪問しました。訪問の理由は、牧草サイレージの切断長や発酵品質について視察するためです。 牧草の切断長がなぜ問題になるかという前に、牧草収穫の流れをおさらいします。 牧草を収穫する方法には、次の2通りがあ…

乳酸発酵をコントロールして、良質サイレージや発酵TMRを作ります

今日は、兵庫県から、獣医師と飼料メーカーの4名の来客があり、サイレージ発酵や発酵TMR調製のポイントについて、学習会を行いました。 北海道では、畑でとれる牧草やトウモロコシを貯蔵するために、サイレージを作ります。 サイレージとは、飼料を乳酸発酵…

牛に味噌汁

先日の学生ゼミ発表。 3年生のF君が、牛に味噌汁を飲ませることについて、発表しました。(おもしろいテーマを見つけてきたものです) 以下、彼の発表を中心に紹介します。 まず、味噌って何から作られるのでしょう? 主原料は大豆ですね。 大豆を主体として…

エサの栄養価、その値はどのように求めているのでしょうか?

私の研究、教育以外の大きな仕事として、農場の乳牛群の飼料設計があります。 牛の乳生産に合わせて、エサのメニュー(配合割合)を決めるというものです。飼料設計は、ルーチンワークではありますが、研究的側面も含まれています。 先日、現在使用している…

今年も台風の被害:道内酪農

今日は娘と夕食をともにしました。 図書館で娘の本を借りた後に、近くのパスタのお店で食事を摂りました。ついでに、お店で宿題も一緒に片付けました。料理が来る少しの待ち時間に宿題を片付けようとする小4の娘。良くできた娘に、父は感心させられました。 …

トウモロコシだって生きている:栄養成分の個性

本学農場では学内の畑で牧草と飼料用トウモロコシを栽培しています。 牧草については、初夏に1回目(一番草)、夏の暑い時期に2回目(二番草)を収穫し、状況に応じて秋口に3回目(三番草)の収穫をします。トウモロコシはゴールデンウィーク明けに種まきし、9…

牧草の収穫から考える:人の意見に流されることのメリット

道央圏でも、牧草の収穫が始まりました。 写真は本学圃場の今日の様子です。向こうに見えるのはサイロの形をしたバス停です(^^) 以前も書きましたが、北海道では牧草の収穫は同一圃場から年に2回というのがメジャーです。今回は1番草です。 dairycow2017.hat…

お米をウシのエサに?!飼料米という制度

みなさん、おばんでした。 楽しい週末を過ごせました。睡眠時間も十分で1週間の疲れを心身ともに取り除くことができた気がします。運動会が実施されたのかどうかだけが気になりますが。。。 明日から長男は宿泊研修で旭川方面。 私は仕事で帯広です。 一昨日…

イギリスの酪農家の意識調査:良い草を作ることは牛飼いのキホンのキ

ウシの基本的なエサはもちろん草です。 しかし、放牧のように青草を食べさせることは一部の地域や時期に限られます。土地条件や気象の関係で、牧草を収穫したら貯蔵しないと年間を通して給与することはできません。 ↓秋の重要作業、トウモロコシの収穫風景 …

乳牛のエサ設計:タンパク質

おばんです。 ブログタイトルでは乳牛と酪農を科学するとうたっていますが、日々の雑感が多く、あまりアカデミックな話しになっていませんでした。少し反省して、酪農科学の学びについても触れたいと思います。 まずはしばらくご無沙汰していた乳牛のエサ設…

エサの乾物含量が大切な話し ジンギスカンを買うときにも使える乾物含量の考え方!?

おばんです。 まさかのアクセス0だった数日前、酔った勢いで男と女、夫婦の話について、個人情報も交えながら書きました。いつも拝見しているブログの方にコメント書いたりしているうちに気持ちが盛り上がってしまって、「どーせ読む人もいないからいいべ~…

エサの評価 このエサの品質は良いの?悪いの?

おばんです。 町内の排雪が入りました。 内地の方にはわからないかもしれませんが、札幌では年に1回、巨大な重機がガリガリと雪を削って町内の隅々までキレイに雪を持って行ってくれます。通常の除雪とは異なります。 道路脇の雪の壁がきれいさっぱりとなく…

若手獣医師向けの勉強会 後編

先日の帯広で泊まった宿がちょっとおしゃれでした。 私は帯広にはちょくちょく出張しますので、どこに泊まるかはその時の気分によって選択します。今回の宿、以前は古い安宿だったのですが、最近リフォームして気になっていました。 今回泊まって、見たこと…

サイロとサイレージ

おばんです。 今日もデータ解析に悪戦苦闘しました。おもしろい結果が見られたもの、全く結果が現れなかったもの、様々でした。 これまでサイロの話しをいくつかしてきましたが、サイロとはどんなものなのか出来上がりのサイレージも含めて紹介します。 サイ…

乳牛のエサ設計:小麦粉のエサ利用

おばんです。 明日は飼料設計の見直しをしなければいけません。農場の牛群の飼料設計を見なおすタイミングはいくつかあります。 飼料設計見直しのタイイング 最も多いのは牧草やトウモロコシを保存しているサイロを使い切って、次の新しいサイロを開封すると…

乳牛のエサ設計 エネルギー編

おばんです。 昨日は、炭水化物を中心にエネルギーについて話しました。今日はその続きです。 総エネルギーと代謝エネルギー 昨日の後半で、①ご飯と牧草あるいは②生米と炊いたご飯、どちらがエネルギーが多く含まれているでしょうか、という問いをしました。…

乳牛のエサ設計

おばんです。 私の専門は乳牛の栄養学です。研究と業務の双方にまたがる大事な仕事が乳牛のエサ設計(レシピを作ること)です。 今日から何回かエサ設計についてまとめてみようと思います。 エサ設計の基本は ウシが必要とする栄養素を過不足なく与えること…

グラスサイレージ開封(2016年産)

牛のエサ設計の見直しをしました。 ウシのエサ設計(メニュー)はこまめに修正します。特に、エサのロットが大きく変わったときには大幅な見直しになります。エサのメニューが変わると、途端に体調を崩すウシがいたり、乳量が減ってしまったりするので、気の…

ヒトが草を食べるとどうなるのか??

先日のエントリー「エサとサプリ、どちらが良いのか?」を書いて、妻に読んでもらいました。書き慣れていないので、コメントをもらいたくて(^^ ) そうしたところ、妻からは「まあいいんじゃないの」との温かいお言葉をいただきましたが、会話の中で、「じゃ…

エサとサプリ、どちらが良いのか?

卒論発表会を来週に控え、当研究室でも学生とディスカッションする時間が増えています。 ある学生の卒論は、飼料添加剤を乳牛に給与した場合に乳生産が向上するかどうかを調べるといったもの。ヒトと同じで乳牛も添加剤(サプリメント)を与えることがありま…