乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

乳牛

なぜ母牛は身を削ってでも乳脂肪を作るのですか

牛乳には脂肪が含まれています。 牛乳に含まれる脂肪ということで乳脂肪と呼ばれ、その濃度は乳脂率といって、ホルスタイン種では平均すると4%くらいになります。 乳脂率は乳成分の中でも変動が大きいのですが、3.5%を下回るものから、5%以上まで季節や個体…

気温が下がるとエネルギー要求量が増えます

ムチャクチャ寒くなってきました。 子牛試験のバケツの水も凍り始めました。岩見沢では雪が積もっているようです。 寒さに対して、我々哺乳類は、発熱することで対策します。 発熱するためには、体内で燃料(エネルギー)を燃やさなくてはいけません。燃料を…

乳牛の家畜化の歴史

反芻動物は小さな順から家畜化されていきました。 ヤギ、ヒツジ、そして最後にウシです。牛の家畜化は、今から8000~9000年前といわれています。 そもそも、家畜化の定義とは?その最も大きな要件は、繁殖(生殖)のコントロールです。 ゾウや、鮎を捕まえる…

ウシは長い繊維が嫌い?

今年の牛舎実験が終わりました。 卒論のまとめのため、連日連夜、学生たちはがんばって分析をすすめています。 そんな中で、PSPSというエサをふるい分けるためのアメリカ生まれのフルイセットでエサの大きさを分類した測定項目があります。 PSPSは、4段構成…

今日の牛乳はおいしい

私の大学では、学内牛舎で生産された牛乳が販売されています。 「健土健民牛乳」という名称です。 この牛乳、教授会では出席する教員に配布されます。 定例の教授会は月1開催なので、毎月、定期的に大学牛乳を飲むことになります。 これとは別に、我が家で…

MUN(乳中尿素態窒素)と、乳牛の健康

ある酪農生産者から質問が届きました。 「牛乳中のMUN濃度が低すぎると、牛は身体(筋肉)を削って乳タンパク生産をするので、免疫力が低下するのではないか?」 といったご質問でした。 第一胃(ルーメン)内で、エサに含まれるタンパク質が、ルーメン微生…

搾乳ロボットセミナー:北米の最新情報

搾乳ロボットという機械が日の出の勢いで普及しています。これは日本に限らず、全世界的傾向です。 搾乳ロボット - Google 検索 通常、搾乳作業は人の手で行います。手搾りではありませんが、ミルカーとよばれる搾乳機器を牛の乳頭に装着する作業は人が行い…

牛に味噌汁

先日の学生ゼミ発表。 3年生のF君が、牛に味噌汁を飲ませることについて、発表しました。(おもしろいテーマを見つけてきたものです) 以下、彼の発表を中心に紹介します。 まず、味噌って何から作られるのでしょう? 主原料は大豆ですね。 大豆を主体として…

氷の大地、牛はよちよち歩きです

いよいよ入試シーズンが始まりました。今週末、まずは推薦入試が行われます。我々教員も、入試関係の業務が割り当てられます。とても重要な業務なので緊張しますが、来年の春に会えるかもしれない未来の学生たちとの最初の出会いの場でもあります。 さて、今…

A2ミルクを知っていますか??

牛乳を飲むと便が軟らかくなる人がいます。私はそういった症状はありませんが、日本人を含む、アジア系の人々に多いことが分かっています。 これは、牛乳に含まれる、乳糖という成分が関係しています。乳糖は、普段口にする砂糖と似た形をした糖の一種です。…

搾乳の役割を終えた牛たちを肉用牛として活用

乳牛は、子を産ませ、乳を搾るための家畜です。 しかし、老齢になり、妊娠ができなくなると、子を産めない身体になります。子を産めないので、当然、乳を搾ることもできません。 ヒトもある年齢を過ぎると、子をもうけることが難しくなるように、ウシも同様…

ルーメンアシドーシスと牛の行動について

先日のフランスでの国際学会で、ルーメンアシドーシス(ルーメン発酵による酸性化)と乳牛の行動について興味深い講演がありました。 演者はカナダの研究者で、私もしばしば研究のヒントをもらっているDeVries博士です。 彼は乳牛の採食行動についての権威で…

牛乳の成分からウシの栄養状態が分かります

乳牛の栄養状態は、エネルギーバランスという言葉で表されます。エネルギーバランスがプラスまたは正の場合は、必要とするエネルギー量(エネルギー要求量)よりも摂取エネルギー量が多く、ウシは太っていきます。 逆に、エネルギーバランスがマイナスまたは…

作物を育てられない土で、ウシのエサを育てる話

私は、4年生対象に、乳用家畜飼養学実習を開講しています。 4年生は、卒業要件を満たしている学生が多く、履修者はあまり多くはありません。 人数が少ないので、フットワークの軽い実習ができるので、今回は、技師に学内圃場(飼料・牧草畑)を案内してもらう…

飼料の物理的有効度を調べるには? ペンステートパーティクルセパレーター(PSPS)

今日は酪農の技術的な話です。 牛には、反芻するという、大切な仕事があります。反芻とは、一度食べたエサを吐き戻し、細かくなるまで再度咀嚼する活動です。 どれくらい細かくなるまで、反芻を繰り返すかというと、ヒツジでは約1mm、牛では数mmと考えられて…

牛は財産

昨日、4年生向けの実習で、酪農の収入について、実際に大学農場を対象に調査しました。 その中で、バカにならない数字となったのが、牛の個体販売による収入です。 酪農場には、ご存知の通り、メス牛しかいません。オスは、ミルクを生産しないからです。 し…

ホルスタインのオス子牛がいなくなる?!

酪農業界の新技術に、「雌雄判別精液」というものが、あります。 牛の世界では、乳牛でも、肉牛でも、メス牛を妊娠させるためには、人工授精が主流です。その他に、受精卵移植という技術も普及しています。 人工授精とは、発情したメス牛に、凍結保存したオ…

乳牛のルーメン内容物は、堅く詰まっていればよいのか?

今日は、酪農のテクニカルな話しです。 最新号の、酪農技術雑誌「デーリィマン5月号」に、私の書いた原稿が掲載されました。 乳牛に、乳を大量に生産してもらおうとすると、穀物を多く与えなくてはいけません。 穀物は、エネルギー価が高く、牛に与えると乳…

エサの栄養価、その値はどのように求めているのでしょうか?

私の研究、教育以外の大きな仕事として、農場の乳牛群の飼料設計があります。 牛の乳生産に合わせて、エサのメニュー(配合割合)を決めるというものです。飼料設計は、ルーチンワークではありますが、研究的側面も含まれています。 先日、現在使用している…

原稿執筆:反芻の新しい考え方

新学期の始まりです どこの職場も新年度は、多少なりと緊張感を持って仕事がスタートしますよね。 大学では、3月までは、比較的自己に向かう仕事中心のスタイルが可能でしたが、4月からは当然ながら、学生に向かう仕事中心のスタイルにガラッと変わります。 …

現場で役に立ってこその研究

今週は学会ウイーク。 今日まで熊本で、日本草地学会に参加していました。 熊本は、桜が満開です。今は、東京に向けて移動中です。 (羽田でアクシデント。滑走路に穴?!なまら遅れました。。。) さて、草地学会で、ひとつおもしろい発表がありました。 牧…

乳牛の子牛を育て分娩させるまでの基本的な考え方とは

今日は3年生に対して子牛の育て方についての講義(演習)をしました。 今回のクラスの学生たちは、前回は牛舎でウシの体重を計測しました。本学の乳牛舎に在籍する生まれたばかりの子牛から親ウシまでおよそ140頭の体重を計りました。 ウシの体重は、ウシ用…

子牛を離乳させるときのポイントとは?

我が家に今夏やってきた3種目のペット、ヤドカリ君。 亀、金魚に続いての家族の一員でとってもメンコイ奴らです。このヤドカリ、夏場に近所のホームセンターで無料で配られていました。 彼らのエサは鰹粉末のまぶされたポップコーンです。我が家のヤドカリは…

乳牛にセレンというミネラルを使ってみると?

今日は土曜日ですが、またもや帯広出張です。今月に入っててこれで3度目。定期券でも買いましょうか(^^;) さて、今日は恒例の若手獣医師のみなさんに栄養学の講義です。今日は脂質、ミネラル(無機質)、ビタミンを講義する予定です。 正直、ややマイナーな…

酪農をシステムで考える:俯瞰的なモノゴトのとらえ方を学ぶ

帯広にセミナー受講のため出張できています。帰りの列車の待ち時間。 時間をつぶそうと喫茶店を探します。 私は、21年前にここ十勝の酪農家で牧場実習生として1年間働きました。休みになると帯広の街に出て、アーケード商店街に店を構えているおいしいコーヒ…

なくて七癖:ウシにも悪い癖がある?!

みなさんは身近な人で気になる癖はありますか? 話すときに出る「えー」みたいな口癖などは、人前でしゃべる機会の多い多い私のような稼業では注意すべき大切なポイントになります。 私の尊敬するラジオパーソナリティーの日高晤郎さんが、若手アナウンサー…

牛の体調が悪くなりました:卒論実験を通しての成長

今年の我が研究室の卒論研究は6人の履修で5テーマです。 先日、長い調査期間を終えて無事終了したOさんの実験。 あとは、現在進行中で終盤にさしかかった2題、これから本番を迎える1題、まもなく開始に向けて最終の詰めを行っている1題となっています。 これ…

乳牛はなぜ夏バテするのか?:第一胃と発酵熱の関係

今日の札幌の最高気温は何度だったのかな。28度くらいでしょうか。ここ最近は乾燥しているので、暑いながらも過ごしやすいです。 さて、乳牛が夏バテをする話しをここ最近何度かしてきましたが、一般には20℃を超えるとウシは暑熱の影響を受けるといわれてい…

夏休みは牛飼いにとっても重要:乳牛の夏バテと学乳の話し

おばんです。 今日は比較的過ごしやすい夜です。 昨夜は大学時代の友人とプチ同窓会でした。長い期間では20年ぶりという人もいてとても盛り上がりました。私は奥さんラブネタでどん引きされていたかもしれませんが(^^;) ↓息子と近所のお友達、今日の一コマ …

ヨーグルト人気と暑さで牛乳が不足:酷暑は牛にも酪農業界にも厳しい問題

今日は中学校の三者面談でした。 妻と長男からその様子を聞きましたが、あまり景気の良い話を先生の口から聞くことはできなかったそうです。 北海道では中高一貫の私立学校というのはほとんどありません。公立高校を選ぶのが一般的。私は地元の行きたい高校…