乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

最新鋭酪農の今:ユーロティアー2018

ユーロティアー2018という、国際農業展示会に来ています。
ドイツのハノーバーで開催されています。

 

今日の気づきを整理します。

・ドイツ全土の農業系大学の展示が見応えあり
民間の展示会(エキスポ)に、大学がよばれてブースを出していました。その数、10以上はあったように思います。

各大学が自分たちの売りの研究を発表しており、見所満載でした。
大学で作った可愛い家畜の絵葉書を配っている大学もありました。

日本ではそもそも大きな農業展示会がありませんが、全国の農学部のある大学が集うイベントは、とてもワクワクする企画だと感じました。

 

・バンカーサイロの被覆材、画期的な発明!

大学展示ブースに隣接して、バイエルン州立の研究所が開発したサイレージの新しい被覆材が目を引きました。

それは、今回のユーロティアー新開発アウォードでゴールドメダルを受賞したくらい、インパクトのあるモノでした。
サイレージはビニールシートで被覆して、酸素を遮断して、乳酸発酵するというのが常識です。ですが、このチームが開発したのは、詰め込んだ牧草の上からある液体を噴霧すると、その液体がゴムのような物質に変化して、それで空気を遮断するというモノでした。

バンカーサイロの上をスプレイヤーが走り、被覆するという画期的な被覆材で、空気の遮断率が従来法よりも格段にアップするそうです。
タイヤなどの重しもいらないので、設置に労力も必要としません。

まさに目からウロコという感じがしました。

とても素晴らしい発明ですが、普及のためには、特別な噴霧器のコストをどうするかという問題がありそうです。

 

・デジタルファーミングが大注目
牛にセンサーを付けたり、水や地形もセンサーで測定し、全ての情報をクラウドにあげて、モバイル端末のアプリでモニタリングする、といったシステムがいくつも展示されていました。
スマホを観ると一瞬でウシや圃場の状況が把握できるといったものです。

 

この手のシステムについては、私も2年前にオランダで学会に参加しましたが、欧米ではものすごい注目を集めています。

 

日本ではセンサー装着についてはそれほど普及していませんが、大規模牧場では、近い将来標準装備になる日が訪れるでしょう。

 

跛行を検知するモニタリング装置が銀賞受賞
3Dカメラで牛の体型をモニタリングする装置が展示されていました。
牛のボディコンディションスコア(太っている、痩せているの指標)を計るだけかな、と思って説明を聞いてみると、そのカメラを使うと歩く様子も把握できることがわかりました。

その画像解析から、ビッコを引くなど、跛行の様子をモニタリングでき、蹄の悪い牛を早期に発見できるようになるそうです。
これ、おもしろいと思いました。

 

・搾乳機器メーカーの勢いが熱い
搾乳システムと搾乳ロボットを販売する企業は巨大なメーカーが存在し、私は勝手にビッグ3とよんでいます。

それら大手搾乳機器メーカーの展示は、ブースの規模、人の配置など桁違いで、さながら祭りの様相を呈していました。
一体どれくらい金をかけているのかと素朴な疑問が生じました。
その“祭り”ブースには、参加者も大挙して押し寄せていました。

酪農は、日本では農業分野としては珍しい右肩上がりの成長分野ですが、それが世界にも当てはまることがよく分かりました。

 

・養豚の分野は中国
酪農の分野は欧米の企業ばかりが目立ちました。

ですが、養豚は中国です。

豚を飼うシステムについては、中国の大企業もイケイケな感じで盛大なブースを出していました。
さすが豚肉生産世界一の国だけあります。

ブタやトリ、あるいはバイオガスシステムなど、普段あまりなじみのない分野も、展示ブースを観ると勢いが感じられ、興味深かったです。

 

今日は1万6千歩あるきましたが、全て回ることはできませんでした。

明日も気合いを入れて見て回るとしましょう。

f:id:dairycow2017:20181114060425j:plain