乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

暑熱対策と繁殖

5月17日に酪農大で「第三回デーリィマネジメントセミナー」を開催いたしました。

 

道内ばかりでなく、内地や海外からも講師をお招きできて、充実したセミナーにすることができました。後援いただいた全酪連、協力いただいた酪農学園フィールド教育研究センターには感謝いたします。

 

講師のお一人、アルバータ大学の大場教授によりますと、暑熱の悪影響は胎児にもおよび、なんとその悪影響は一生涯にわたって続く可能性があることが報告されました。

 

暑さの本場(?)群馬県で活躍なさっている芦沢獣医師からは、ホントに暑いときにどのように牛を冷やすかという点について解説がありました。

府県で実際に取り組まれている送風機や細霧、ソーカー(水を牛にかけるシステム)など、多岐にわたる実例が紹介されました。

 

暑熱対策に関して、最も直接的なダメージがあるのは乳量減少と繁殖成績の悪化でしょう。

本学でも夏場の繁殖については課題になっています。

 

暑熱下の繁殖については、本学獣医学類の杉浦助教から講義がありました。

 

繁殖成績の数字を改善していくためには、これまでの常識をガラッと変えるという意味のパラダイムシフトが必要かもしれません。

 

セミナーとは離れますが、その前後を挟む形で、酪農アドバイザースキルアップ研修会が開催されました。

こちらは関係者だけの内輪の研修でしたが、江別市内の酪農場をリアル教材として、暑熱対策を考えるというものです。


会場となった牧場では、施設面では暑熱対策にやり残している点はあったものの、見事な繁殖成績をたたき出していました。

 

牧場長お話しに寄りますと、発情を見逃さないこと、発情を発見したらとにかく種を付けること、プログラム授精を積極的に活用すること、牧場長と繁殖担当者が密に連携を取って相談し合うこと、を徹底しているそうです。

 

繁殖は技術と人がうまくかみ合うと、暑熱下であってもがた落ちせずに回していくことができるようです。

逆に、巨額を投じて暑熱対策をしても、歯車がかみ合わないと(人の意識が繁殖に向いていないと)、「種」は止まっていかないのかもしれません。

 

今年の夏も暑くなるのでしょうか。。。

物心両面で、できうる限りの準備をして夏に臨みたいです。

 

↓今年も一番牧草の収穫が始まりました。大きな共同研究プロジェクトでコンビラップによるサイレージ調製を行いました。