乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

スマート酪農による牛群管理

明後日1/23は大学の卒論発表会があります。
今年の私の研究室では、4課題の卒論発表があります。

テーマの一つにスマート酪農に関するものがありますので、今日はその紹介をいたします。

乳牛群を適切に管理するためには、様々な情報を整理、集計する必要があります。
その牛の一生や健康、繁殖の履歴です。

 

在籍する一頭一頭について

誕生日
分娩日
発情日
受精日
分娩予定日
治療歴
乳量
泌乳日数と乾乳予定日
産んだ子牛の情報
といったものを集計、整理しなくてはいけません。

 

さらに最近では、これらオーソドックスな情報に加えて、採食時間や反芻時間という行動もチェックできるシステムもあります。

 

二昔前は、これらの情報を紙に書いてファイリングしていました。

一昔前から現在までは、牛舎の事務所に設置されたパソコンで、一元的に管理するようになりました。

現在の最新システムでは、これらの情報をクラウドにあげて、その情報を個人のスマホなどで閲覧・管理するというスタイルに移行しつつあります。

 

パソコン管理では、机の前に座って注意する牛の情報を確認し、必要であれば紙媒体で牛舎に持ち出す必要がありました。

データを閲覧できるのも、パソコンを操作できる人間だけでしたし、その日の注意情報もパソコンを立ち上げないと分かりませんでした。

 

それがスマート酪農システムでは、その場でスマホでパッと情報確認が可能です。

その日の注意事項も、スマホに通知が来て知らせてくれます。

 

そのようなスマート酪農システムの評価について、ひとりのゼミ学生が卒論で取り組みました。

 

さて、その結果や考察については、まだ取りまとめ中なので公開できませんが、卒論とは関係のない部分でコメントしたいと思います。

 

スマート酪農は牛にセンサーを付けたり、クラウドスマホを連携させたりして、飛躍的に情報の閲覧性やそのスピードを向上させました。

ですが、当たり前ですが、スマホがないと何もできません。
もちろんパソコンからも管理できますが、いずれも電気が必要です。

 

つまり電気がないと何もできないということです。

昨年夏の大停電では、スマホでの操作は実質不可能になりました。

本学では、スマート酪農システムは試行段階だったので、大きな影響はありませんでした。

酪農はそもそも搾乳という電気がないとダウンしてしまう農業形態なので、停電時にスマート酪農システムが使えなくなっても、あまり目立たないかもしれません。

 

ですが、巨大農場のようにスマート酪農システムへの依存度が高ければ、停電によるシステム停止の影響は無視しできないレベルになると想像します。

 

もう一つ、最近の新聞記事で、ポイントカードからの個人情報流出が伝えられています。

今朝の新聞でも、あるポイントカードの個人情報が、犯罪捜査時に無断利用されているという記事がありました。


スマート酪農システムも、その開発企業のクラウドサーバーに、全てのデータが吸い上げられています。
自分の牧場の牛の履歴や飼い方など、システムに情報を細かく入力すればするほど、使い勝手は向上しますが、その情報は企業にも共有されてしまいます。

 

それがどのような悪影響があるの?と聞かれると、私には具体的なことは答えられません。便利になっているのだから問題ないでしょ、といえばそれまでです。

ですが、私は、そのことになんとも言えないモヤモヤっとした気分を覚えてしまいます。

今回は、この辺で閉じますが、実際の使い勝手などは卒論の方で検討していきます。

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