乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

ミャンマーの大学教員の置かれた立場

ミャンマー人の友人ミンさんとその奥様から聞いた、国内の壮絶な話しです。

 

ミャンマーの国立大学の教員は、公務員だそうです。

公務員ということは政府から給料をもらう立場で、思想信条はどうあれ、主権を掌握している軍事政権側の人間ということになってしまいます。

ミンさん夫婦が前政権のスーチーさん時代から大学教員であったにも関わらず、です。

 

軍事政権やそこから給料をもらっている公務員は、軍事政権を好ましく思わない民衆からすると「敵」ということになってしまいます。

 

反政府の武装組織にPDF(人民防衛軍)というものがあるそうです。

PDFは、軍の関係者は敵とみなして攻撃をします。

 

ミンさんの勤める獣医科大学はネピドーという首都にあり、軍ががっちり掌握しているそうです。都市へ入る道路には全て検問があり、武器などの持ち込みは厳重に監視されています。

軍の検問のおかげで街の中は安全が保たれているそうですが、それでもPDFに属する学生が潜んでいて、しばしば大学内でも教員が銃で攻撃を受けるそうです。

 

想像してみてください。

教鞭をとる教員に、学生が銃を発砲するという光景を。

 

とてもじゃないが、安全に授業ができないということで、ミンさんも一時は大学を離れて実家に避難していたそうです。

ですが、地方の町村になると、軍の影響力が及ばないため逆に危険だということで、しばらくすると大学に戻ったそうです。

 

軍を好ましく思わないが、軍によって治安が保たれているというジレンマ。

 

奥様の生まれ故郷はネピドーから遠く離れた田舎町なので、PDFの勢力圏内だそうです。高齢の母に会いたくても、身の危険があるため行けないと彼女は言っていました。

 

PDFは公務員の名簿を持っているので、身分証明書を持っていると身元がバレて殺されてしまいます。身を守るために、ミンさん夫婦は外出の時はIDカードは隠し持っているそうです。

 

そんなに命の危険があるならば公務員を辞めれば良いではないか?と思います。

 

ですが、公務員を辞めると、今度は軍に捕まってしまい牢獄に送られてしまうそうです。

 

右にも、左にも行けない、そんな恐怖のジレンマとともに、彼らは日々生活していると聞き、僕の胸は痛みました。

 

大学教員だけでなく、医師も同様で、タイなどの外国に逃げ出す医師も多いそうです。

そのため、ミャンマー国内の医療水準は低下しており、日本ならどうってことのない病気でも治療ができずに命を落とすことも珍しくないようです。

 

停電もハンパないようです。

ヤンゴンやネピドーでも毎日数時間は停電があるそうですが、大都市以外だと逆に通電が1日数時間だそうです。

ただでさえ熱帯地方のミャンマーでは、エアコンを使えないことは死活問題でしょう。

 

それだけ命がけで大学教員として働いても、月収は日本円で2万円ほどとのこと。

物価上昇が著しいミャンマーではとても生活ができない額だそうです。

わずか2万円の職を辞すと逮捕されてしまう。。。

 

そこで、ミンさん夫婦は副業として、飼料会社を設立し、飼料設計を行うなどして生計の足しにしているそうです。

値段も安く、サービスも一流なので、酪農家からは好評のようです。

 

彼らが夫婦で交互に海外に留学するのも、生計の維持とともに、何かあったときに家族が路頭に迷わないようにとの思いからだそうです。

 

スマホのメールや写真も、送ったり受診すると、すぐに消去するそうです。

なぜなら反体制派を探し出すために、軍や警察は市民のスマホを頻繁にチェックするからです。通信履歴や写真などから交友関係を探られて、あらぬ疑いをかけらないようにしなければいけません。

 

とにかく息苦しい毎日をミャンマー人は過ごしているそうです。

日本では最近ほとんど報道されていないミャンマーの「今」を聞いてきました。

 

軍や軍の側に付く人=暴力で支配する側=悪

市民組織(PDF)=虐げられている側=被害者=善

このようなイメージを、僕は漠然と思っていました。

 

でも、善の側の人間が、悪の側の人間を襲い、殺害することも珍しくない。

 

彼の国では、自分の意思ではどうすることもできない苦しみ、悲しみ、葛藤が国民を支配しているようです。