乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

副産物飼料にもコロナ禍:醤油粕

乳牛の飼料、メインの飼料原料として4種類あります。

 

・牧草や飼料用トウモロコシといった粗飼料

・トウモロコシや大豆、麦といった濃厚飼料

・ヒト用の食料生産過程において産み出される副産物飼料

・ミネラルやビタミン、機能性を持った栄養補助飼料といった添加剤

 

この中から、今日は副産物飼料の時事ネタを紹介します。

 

本学では、醤油粕という副産物飼料を長らく使用しています。

※厳密には、ビートから砂糖を精製する際の搾り粕であるビートパルプや、大豆から油を搾油する際にでる大豆粕も副産物といえますが、通常は濃厚飼料の分類です。

 

醤油粕の原料は、大豆(+小麦)です。
詳しい作り方は醤油メーカーのHPをご覧ください。

原料 | キッコーマン ホームページ

 

日本酒と同じく、コウジカビでデンプンやタンパク質を分解し、そこに塩を加えたあとで、酵母や乳酸菌の発酵によって熟成させるといった手順です。

 

醤油の元ができると、布で包んで濾すことで、醤油と醤油粕に分離されます。

 

この醤油粕には、原料の大豆や小麦に加え、微生物や塩分など、牛にとって重要な栄養素が多量に含まれています。

 

醤油メーカーにとっては廃棄物でも、牛飼いから見ると貴重なエサ。

エサとして買ってくれるならば、醤油メーカーも助かります。

そんなわけで、醤油粕は安価で高栄養な副産物飼料として流通しています。

 

先日、その醤油製造メーカーから、一通の通知が届きました。

 

「醤油の売り上げが急減しているので、副産物である醤油粕の製造量も激減している。ついては、納品が滞ることもあるので、了解いただきたい」

というものでした。

 

これはおそらく、外食や休校時の給食での醤油使用料が大幅に減ってしまったことで、醤油製造量が激減していることを反映しているのでしょう。

 

たしかに、街では観光客を見かけません。
外国人観光客の団体さんが、居酒屋で刺身を醤油につけて食べるなんていう光景も久しく目にしていません。
我が家も、行きつけの居酒屋から、足が遠のいて久しいです。

 

コロナによって、ウシのエサとなる副産物まで逼迫してしまいました。

風が吹けば桶屋が儲かる」のコロナ版という、笑えないお話しです。

 

結局、本学では納品量をこれまでの半分に減らしながらも、購入は継続できそうなのでホッと胸をなで下ろしています。


ウシのエサとしても、学生への教育展示用にも、醤油粕はおもしろい原料ですから。

以前の楽しくハッピーな世界は戻ってこないのでしょうか。。。

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