乳牛と酪農を科学する

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乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

乳牛の世界も少子化で悩む?!:初妊牛の市場価格の暴騰

おばんです。

 

今週末は出張から戻り、久しぶりにのんびりできました。学会の準備やキリキリする出張を終えてグダっとなりました。妻からのご褒美で、昨夜は近所の居酒屋で夕食。ささやかな打ち上げです。

 

今日から新年度がスタートです。年度末に積み残した仕事が結構あって、それをやっつけているうちにあっという間に1日が過ぎました。農場の顔ぶれもずいぶんと変わり、新鮮な1日となりました。 

 

今日は牛の世界の少子化(?)についてお話しします。

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初妊牛の市場価格が暴騰

 

近年、酪農の業界はメガファーム、ギガファームといって数百頭~1000頭に届こうかという規模の大牧場が増えています。スケールメリットで徹底的なコストダウンを行い、収益増を狙う企業的な経営スタイルです。

 

このような巨大酪農場では、在籍する搾乳牛を維持するために外部から若い妊娠牛(初妊牛といいます)を購入してくるのが一般的です。大規模な酪農家がこぞって初妊牛を市場から購入するため、品薄傾向が続き、市場での初妊牛価格が暴騰を続けています。

 

ここでいう初妊牛とは分娩を数ヶ月後に控えたホルスタイン種若雌牛で、20ヵ月齢くらいで市場に出されてきます。おなかの中にはホルスタイン純血か黒毛和牛との交雑種(F1)が胎児として入っています。

 

自分の農場で子牛から成牛まで育てて、分娩後は搾乳牛として戦力になってもらう経営スタイルを自家育成農場といいますが、こういった農場ではホルスタインが腹に入っている初妊牛を購入します。


一方、農場には搾乳牛しか置かず、親牛は全て購入でまかなうという酪農家はF1子牛が腹に入っている初妊牛を好みます。自家育成をしない農場では、子牛を飼う施設や労力を省くことができるというメリットがあります。こういった農場で産まれた子牛は間もなく市場に出荷されますが、ホルスタインよりも肉質のすぐれたF1子牛の方が高く売れるので、F1を妊娠している初妊牛が好まれるのです。

 

市場という言葉が出てきましたが、ホルスタインの初妊牛は一体いくらくらいしているのでしょうか?

 

初妊牛の相場ですが、数年前までは今よりずっと安くて1頭40~50万円くらいでした。これでも、「高っ!」と思いませんか?10頭飼えば500万です。

 

ところが、今は初妊牛の引き合いが強く、1頭あたり90~100万円にもなっています。これは異常価格で、おいそれと購入できる価格ではありません。

 

「北海道乳牛産地情報 (平成29年4月1日現在)」

全国酪農業協同組合連合会(全酪連)

 

F1を妊娠している初妊牛の引き合いが強いため、市場に売却予定の育成牛にはホルスタインではなく黒毛和牛の精液を付けるケースが増えてきています(乳牛は人工授精で妊娠させます)。

結果として産まれてくる子牛もF1が多くなり、全国的に見てホルスタイン種が生まれる数自体が減ってきています。少ないホルスタイン種の子牛を大規模農場が奪い合うという構図が、価格の暴騰を招いています。

初妊牛価格の高騰は、初妊牛を市場に出せる酪農場にとっては極めておいしい話で、ちょっとしたバブルの様相を呈しています。

 

乳牛の世界も、人の世と同じで少子化が大きな問題となっています。

これ以上ホルスタインの数が減ってしまうと、生乳の供給量を確保できなくなり、牛乳の価格が上昇してしまうかもしれません。

牛乳が高級品になったらどうしましょう??

 

そこで、切り札として注目を集め出したのが、育成牛の輸入です。

長くなりましたので、続きは次回に。