乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

首都圏の酪農事情を学んできました

東京に隣接した首都圏の獣医師の勉強会に呼ばれてセミナーをしてきました。


それに先立ち、近隣の酪農場6戸を見学させていただきました。

 

土地が豊富で自給粗飼料を利用する北海道酪農とは異なり、ほぼ完全他給(全て購入飼料)の経営がほとんどでした。


一部、飼料イネサイレージとコーンサイレージを酪農家グループで作っているところもありました。

サイレージは細断型ロールベーラーでラッピングするので、収穫には時間がかかります。
ハーベスター1台で1日1ヘクタールくらいのスピードだそうです。

2台のハーベスターで1日2ヘクタール、全部で100ヘクタールくらいあるので約2ヵ月収穫に要するそうです。

そのため、トウモロコシは105日(早生)くらいから120日(晩生)まで品種の熟期をバラつかせて、播種時期もずらして、栽培しているとのこと。

その工夫がスゴいと感心させられました。

 

飼料は完全他給なので、収穫作業がなく、TMRも購入しているところは飼料調製作業もなく、労働的にはゆとりがあるように感じました。

一方で、他給(購入)飼料の価格が暴騰しているので、経営を圧迫しているという切実な声も多く耳に届きました。

 

また、乳価が北海道よりも10円以上高いので、カッチリ12時間間隔で搾乳して、限界まで高乳量を求めなくても良いように感じました。

僕が訪問した農場は、35kg以上常時搾るという高乳量牛群は見当たりませんでした。

僕たち人間も本州の都市部に行くと他人との距離が近くて、建物も狭くてストレスを感じます。

ウシも同じで、おしなべて牛舎や飼育スペースが狭く、その過密や過密にともなう糞尿汚染のストレスが乳量増加の足かせになっているようにも感じました。

 

一方で、北海道の酪農場では1日14時間労働というところもザラにありますが、こちらの一般的な飼い方では、そこまでガイな長時間労働は回避できているように感じました。

この点では、ゆとりのある酪農経営ができているといえそうです。

 

案内いただいた獣医師のみなさんは、みな熱心で、農家のためにになりたいという思いを前面に出して仕事に励んでいました。

そういったアツい正義感が眩しく感じられ、彼らとのディスカッションにはつい熱が入ってしまいました。

あっという間のセミナー閉会でした。

 

東京という大消費地を抱えている首都圏酪農の特徴と、そこで働く獣医師たちの勉強したい、農家のためになりたいという情熱に触れたセミナーでした。

 

こういったアツい話しになると時間がいくらあっても足りません。

また再訪して、学びの時間を共有したいという思いを抱きつつ帰路につきました。

内地の酪農事情についての学びを得て、本学では学生も多く都府県からきていますので、授業での話題が一つ増えました。

↓こちらは北海道の酪農場

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