乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

気温が下がるとエネルギー要求量が増えます

ムチャクチャ寒くなってきました。


子牛試験のバケツの水も凍り始めました。
岩見沢では雪が積もっているようです。

 

寒さに対して、我々哺乳類は、発熱することで対策します。

発熱するためには、体内で燃料(エネルギー)を燃やさなくてはいけません。
燃料を燃やすためには酸素が必要ですね。

バーベキューで、火をおこすときにウチワであおぐのは、炭に対して酸素を供給しているからです。

この場合、燃料は炭になります。

 

牛や我々人では、燃料は炭水化物か脂肪がメインで、その次にタンパク質になります。

体内の細胞レベルで、炭水化物、特に糖質や脂肪を酸化する(燃やす)ことで、熱を生み出します。

ものを燃やすと二酸化炭素がでるので、呼気として吐き出します。

 

気温がプラスの時には順調に発育していた子牛ですが、寒さとともに発育のスピードが落ちてきます。


これは二つの条件が重なったときにみられる現象です。

一つ目の条件は、哺乳量が変わらないこと
二つ目は、気温が低下し発熱量を増やさなくてはいけなくなること

 

これら2条件が重なったときです。

 

一つ目の哺乳量は、燃料の供給量と言い換えることができます。

僕たちが今実験している子牛たちで試算したところ、気温が0度から5度の範囲であれば、ミルクを高脂肪タイプに切り替えることで発育速度を維持できます。

 

ですが、気温がマイナスになってくると、ミルクの量を増やさないと、これまで同様の発育を保つことができなくなります。

それまでは発育に回っていたミルクからのエネルギーを、熱産生に使わざるを得なくなるからです。

 

ミルクの量が少ないと、発熱だけでエネルギーを使い切ってしまい、全く増体しなくなることもあります。

増体しなくても健康に生きてくれればまだ救われますが、エネルギーの大半を発熱で使ってしまうと、免疫に回すエネルギーが不足します。

免疫はエネルギーを大量に消費するシステムなので、エネルギー不足だと免疫力が低下し、病気にかかりやすくなります。

 

ヒトも寒くなると風邪を引きやすくなりますが、発熱のためにエネルギーを消費してしまい、免疫に回すエネルギーが不足することも関係しているかもしれません。

 

健康に、スクスクと子牛に育ってもらうためには、寒さによって奪われる熱を補うだけのエネルギー、すなわちミルクを増量することが必要です。

当然ながら、ジャケットを着せたり、隙間風を防ぐといった対策をして、体温が奪われることを防ぐことも大切です。

 

そんなわけで、昨日、学生たちと一緒に寒さ対策に風よけのシートを設置しました(がんばってくれた学生たち、ありがとう)。

元気に育ってくださいね、子牛ちゃん

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