乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

ウガンダ人から、ウガンダ酪農について学びました

今日、ウガンダから本学に来校していた酪農家、酪農獣医師のみなさんに対して講義をしました。

受講生が3人、通訳を交えて5人という少人数の学習会だったので、横道にそれながら和気あいあいと、活発に終えることができました。

 

ちなみにウガンダという国、どこにあるかご存知ですか?
実は私も正確にはわかりませんでした(^^;)
さ、Googleマップを開いてみましょう。

 

講義は乳生産と飼料給与についてがテーマでした。

日本では、酪農家の牛乳販売単価(乳価)に対して、飼料費は3割~5割といったところだと思います。ちなみにこれを乳飼比といいます。

 

乳価100円に対して、40円のエサ代だと、乳飼比は4割となります。

 

ウガンダでは、乳飼比があまりにも日本とかけ離れていて、びっくりさせられました。

 

日本では、最近の乳価上昇によって、酪農は儲かる産業であることを、数字とともに伝えました。数字をみたとき、ウガンダ人受講生は、金額の高さにとても驚いた顔をしていました。

 

ウガンダは、放牧中心の酪農が主体なので、雨季は草資源が豊富にあり、牛乳生産量が増えます。一方、乾季はエサ不足になりがちなので、牛乳生産量が減ります。
このため、雨季は乳価が安く、乾季は上昇するそうです。

 

雨季の300シリング(9円!)から、乾季の1100シリング(33円)まで変動するそうです(1円は、約33ウガンダシリング)。

 

日本では、生産乳量を増やせば収入が増えるので、濃厚飼料を購入してきて与えることで利益は増えます。

一方で、ウガンダでは、エサ代が乳価と同じか、場合によっては乳価よりも高くなってしまうそうです。したがって、買いエサを与えると乳飼比が上昇し、利益が減ってしまうそうです。

たくさんエサ(この場合は濃厚飼料を含む)を食べさせて、牛乳生産を増やしましょうという、単純な話しではないということでした。

 

お国が違うと、文化が違う。
とても興味深い体験でした。

 

最初の導入部分の対話で、私が準備してきた講義の内容をそのまま伝えても、彼らが求めているものとはズレが生じそうだと考えました。


あらかじめ打ち合わせしていた通訳のかたには申し訳なかったですが、そこからはアドリブでの講義に切り替えました。

 

エサ代を増やすのではなくて、エサを無駄にせずに、利用効率を高めるための理論や工夫について解説しました。

 

放牧中心ということだったので、まずは、放牧地草に豊富に含まれるタンパク質の特徴と、その有効活用についてお話ししました。

 

放牧地草のタンパク質は、分解速度が極めて速いという特徴があります。
ルーメン(ウシの第一胃)の微生物は、タンパク質とエネルギー源である炭水化物が同時に存在しないと、効率よく増殖することができません。
タンパク質が、ルーメン微生物に利用されないと、アンモニアとなって血中に吸収されて、最終的には尿として排泄されます。つまり、無駄になってしまうのです。

 

そこで、放牧に牛を出す前と、戻ってきた後では、どちらが炭水化物を与えるのに適しているか、といった話をしました。

 

これは、タンパク質とエネルギー源である炭水化物の「同期化」という技術になります。
理論的には、炭水化物を放牧前に与えておけば、放牧地でタンパク質源である青草を食べたときに、ルーメン微生物は炭水化物とタンパク質の両方を利用して、効率よく利用できます。


このような講義に、彼らは一生懸命メモを取っていました。

 

ここらへんから、熱心な質疑応答やディスカッションが始まり、とても刺激に満ちた講義になりました。一生懸命吸収しようという姿勢が、とても感じよかったです。

 

いつも思いますが、場が盛り上がると、こちらも乗ってきて実りのある講義になります。

 

バナナの皮や暖地型牧草のネピアグラスやエレファントグラスといったエサの話しなど、ウガンダ酪農について学ぶことができ、私にとっても有意義な時間でした。

彼らには、残りの日本滞在を満喫して欲しいです。

 

↓いくつものエサを混ぜて与えるTMRも興味津々様子でした

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