乾乳牛の栄養管理について考える機会がありました。
この農場では、乾乳牛の栄養管理については後回しになっており、ここ数年間手が加えられていませんでした。
その牛群では、分娩前後に低Ca血症やケトーシスがポツポツみられています。
かかりつけの獣医師からの指摘を受けて、僕が飼料設計について見直しをかけることになりました。
血中のカルシウム濃度が低下すると、筋肉の収縮が弱まり起立不能となってしまいます。
ケトーシスというのは、牛が体に蓄えた皮下脂肪や内臓脂肪を血液中に溶かし、脂肪をエネルギー源とするところからスタートします。脂肪のエネルギーを利用して乳生産をするので、肝臓での脂質の代謝量が多くなります。牛は草食動物なので、脂質をエネルギー源とすることは苦手です。結果的に、肝臓に負担がかかり、体調不良となってしまいます。このような症状をケトーシスといいます。
これらが発生する牛群では、分娩前からの採食量が減少していると考えられます。
分娩前の乳牛は乾乳期に当たります。
乾乳牛の採食量減少を防ぐために、北米を中心に多くの研究成果が積み上げられています。乾乳期の飼養管理法は、ここ最近、日進月歩で進化しています。
昔とは全く異なる考え方が浸透してきています。
僕も、最近、酪農の師匠の一人に、生産現場で活用されている最新の考え方を教えてもらいました。
今回は、その考え方を実践の場で試してみることになりました。
10年一昔といいますが、酪農サイエンスにおいても同様のことが言えます。
10年前に常識だったエサのやり方が、今では否定され、当時では考えられなかった給与法が「正解」になったりしています。
みなさんにとって、10年というとどれくらいの時間になるでしょうか?
10年前と同じ考え方を自らの「常識」として、そのまま使い続けているヒトは決して珍しくないと思います。
我々の世代だと「あっという間」に通り過ぎる時間間隔になるかもしれません(つい最近のできごとといいますか。。。)
なんて言ったって、10年前といえば、2010年ですからね~(^^;)
たしかに変わっていない事柄も世の中には多いです。
ですが、科学は進歩します。
ちょっとの間、勉強を怠るだけで、時代に置いて行かれかねません。
今回、久しぶりに乾乳牛の給与法を見なおした牛群で、今後どのような反応がみられるか楽しみです。
最新の科学が、牛たちを良い方に変えてくれるでしょうか。
ワクワクしています。