成人男子が1日に必要とするカロリーは二千数百キロカロリーと言われています。
また、1日に350gの野菜を食べましょうという目標値もどこかで目にしたことがあります。
このように、どれだけの栄養を1日に食べる必要があるという値を要求量といいます。
ヒトの各種栄養に要求量があるように、ウシにも毎日摂取すべき栄養素別の要求量があります。
日本で使われているウシの栄養要求量についての教科書は、国産のものとアメリカ産があります。
最近は主にアメリカ産の教科書が使われる傾向にあります。
これまで、アメリカ版のウシの栄養教科書はNRCというもので、2001年版が使われていました。
昨年、20年の時を経て、最新版がNASEM(ナセム)2021という名称に生まれ変わって出版されました。
今回、研究や現場の活動でお世話になっている酪農団体からオファーをいただき、NASEM2021の学習会の講師をやってきました。
しかも、豪華なことに、カナダからO教授と広島からS教授が招かれて、3人で講師を務めました。
分厚い教科書なので、3人で分担しても相当なボリュームになりましたが、重要な項目をピックアップして二日間で解説してきました。
内容が改善されガラッと変わった栄養素もありますし、20年前から据え置かれた項目も少なくありませんでした。
全体的には、この20年間に研究が進み、ウシの栄養や生理についてさらに理解が進んだことがよくわかりました。
極端な例では、栄養素の中には、2001年の時の基準で正しいと思ってやってきたことが、NASEM2021を読んだその日に推奨値から大きくズレていたことに気付くといったものもありました。
太平洋戦争の敗戦とともに、子供たちに教える内容が天と地ほども変わってしまった教師のような感覚です。
(道新の小説、木内昇さんの「かたばみ」、しみじみと良い小説でした。まもなく終わってしまうのが寂しいです)
NASEM2021は、講師をするに当たって何度も読み返しましたし、読み返すたびに新しい発見があるという難解な文章でした。
このような内容でしたので、かなり噛み砕いて解説したつもりですが、受講生も一度で理解できないヒトが多かったと思います。
本当に自分のものにするためには何度も復習する必要があるでしょう。
乳牛栄養学は進歩を続けているので、酪農人は常にアップデートしていかなければいけません。
20年前とは乳牛栄養学の常識が大きく変わりました。
インプットを怠らないように勉強することが大切ですが、その時間をどのように確保するか、それが今の僕には大きな問題ではあります。。。
↓卒業生で道南のせたな町で新規就農したA君の牧場にて