前回に続き、学会報告です。
今回のシンシナティで学会ですが、私以外にも、日本からの発表が数題ありました。
今日は、その中の一つ、全酪連のチームの発表を紹介します。
ここ最近、私も気になっている、哺乳から離乳後にかけての子牛に対する乾草の給与試験です。
乳用の哺乳子牛に乾草を給与することは、賛否が分かれるテーマです。
今回の発表のユニークな点は、乾草を子牛のスターター(配合飼料)に混ぜて給与したことです。
乾草とスターターの比率は、9対1でした。
乾草を短く切って、スターターと混ぜて給与すると、子牛は乾草を選り分けることができません。そのため、混合飼料を与えると、子牛はスターターと乾草を一定の比率できちんと摂取しました。
一方、一般的な飼い方であるスターターと乾草を分けて与えた子牛(分離給与)では、離乳後に配合飼料ばかりを食べて、乾草の摂取量が減りました。
混合給与子牛は、乾草を多く食べました。
これ自体は、よいことのように思えます。
ですが、その結果は、乾草の摂取量が多すぎたせいか、分離給与牛と比べて混合給与牛では摂取量と発育が劣ってしまいました。
発表していたSさんは、草を食べさせすぎたかもしれないという考察をしていました。たった10%の混合比率でしたが、子牛にとっては草の食べ過ぎだったのかもしれません。
穀物ばかり食べるのでなく、牧草も食べてもらいたいけど、草を食べさせすぎると発育が停滞していまう。
なんとも悩ましい結果でしたが、着想自体はとても興味深いものでした。
同じ繊維給与について、成牛の視点からの発表もありました。
コーネル大学のチームは、分娩直後の経産牛に繊維質をどの程度の比率で給与すればよいかを検討していました。
分娩後の繊維(NDF)含量を35%とした群(高繊維牛)と、33%の群(低繊維牛)での比較でした。
高繊維牛は、低繊維牛と比べて、NDFだけではなく、不消化NDF(uNDF240)と物理的有効繊維(peNDF)含量も高い飼料構成でした。
一見すると、繊維をたくさん与えた方が、健康的なイメージが湧きます。
しかし、結果はそのイメージに反するものになりました。
繊維質は消化速度が遅く、エネルギー供給源としては穀物よりもゆっくりとしたものになります。したがって、高繊維飼料を分娩直後に与えられた牛たちは、エネルギー供給がうまくいかず、肝臓への負担が増したという結果となっていました。体脂肪を動員する量が増えるので、肝臓の脂肪蓄積量が増えてしまいました。いわゆる脂肪肝の状態です。
穀物をたくさん与えるよりも、草を与える方が牛にとっては好ましいように思えますが、草だけではエネルギー不足になってしまいます。
先ほどの子牛の研究と、こちらの分娩直後の親牛の研究の両方に共通する、牧草をやり過ぎるとエネルギー供給がうまくいかず、牛の生産性にとってマイナスになるという結果でした。
一般的なイメージと牛の実際は異なるという、典型的な二つの研究結果でした。
この辺りが、酪農科学の難しくも、おもしろいところでしょう。
今回の国際学会では、多くの気づきを持ち帰ることができました。