乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

乳牛の飼料設計を講義します

大学は、後期の授業も最終盤です。

ゼミは、明日で最後。

あとは、学生にとっては大変なテスト期間を経て、卒論本文の提出と、成績付けを残すのみとなりました。

教員は、卒論の指導を通して得た研究成果を、まとめる季節です。
学会発表や、論文執筆などを、これから新年度にかけての期間は、頭をフル回転させる期間になります。

 

さて、そんな中、来週は2本の外部講義があります。
ひとつは酪農ヘルパー、もう一つは恒例の十勝青年獣医師会の勉強会です。

 

酪農ヘルパーという職業について、簡単に説明すると、酪農家さんが休暇をとりたいときに牛舎作業を代行する専門家集団です。

酪農ヘルパーは、搾乳作業に加え、エサやり、除糞など、あらゆる作業をこなします。作業の流儀や使用する機械は、酪農場によって千差万別です。

したがって、酪農ヘルパーは、単純に牛の扱いが出来れば良いだけでなく、多様な牧場スタイルにへの適応力が求められます。

 

獣医師と酪農ヘルパー、仕事の内容は異なりますが、酪農家を側面から支援する職業であることには違いありません。

 

そんな彼らに、乳牛の飼料給与の考え方について、講義をすることになりました。

 

乳牛の飼料設計は、まずは牧草やトウモロコシサイレージなどの粗飼料を、十分に与えるところからスタートします。

 

乳牛が必要とする栄養素には、大きく二つの柱があります。
それは、生命を維持するための栄養素と、乳生産のための栄養素です。
生命維持の栄養素+その他の栄養素、この考え方は、ヒトも同じですね。

アスリートなど激しい運動をしている人は、ものすごいカロリーを摂取しますが、これは「維持エネルギー」+「運動に要するエネルギー」に分けられます。

 

搾乳牛の場合、粗飼料からのの栄養素で、生命維持に要する栄養をまかない、さらに10kg程度のの牛乳生産も可能です。

一般的な乳牛は、20~40kg/日の乳を生産可能なので、不足する栄養素を穀物などの、他のエサからまかなうことになります。

牛は草食動物なので、タンパク質を肉や魚から与えることはできません。
したがって、大豆油かすからタンパク質を与えるのが、一般的です。

エネルギーの不足は、デンプンで補うのが一般的で、主要なデンプン源としてトウモロコシの実を与えます。デンプンの消化率を高めた、圧片トウモロコシという加工形態が、一般的です。

エネルギーとタンパク質の必要な量を飼料メニューに加えたら、最後にカルシウムやリンといったミネラルと、A, D, Eといった脂溶性のビタミンを、添加剤として加えます。

ざっと、このような流れで、飼料のメニューを構築していきます。

 

このような流れを説明するのですが、一方通行の講義では、理解が深まらないので、協働学習(アクティブラーニング)の手法を使って、講義しようと思います。

学生には、飼料設計の実際は少しレベルが高いのですが、明日のゼミの時間に、さわりだけでも実施してみようと思います。

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