乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

酪農セミナー参加:帯広

おばんです。

ブログ、面白いです。

月間のPVが100を超えたとのこと。

人気のブログからすれば吹けば飛ぶような数字だけど、こういったことがあまり得意でない中年のおじさんが書いたニッチブログなので、本当にありがたいことです。訪れてくれた方、星をつけてくれた方、読者になってくれた方、感謝です。

 

ご褒美は勉強の最も大きなモチベーションですから、これからもせっせと綴っていこう!と気持ちを新たにしました。勉強が長続きしなくても困っている方、ご褒美を意識するといいですよ。

 

酪農セミナー

 

今日は帯広市で酪農セミナー受講です。昨日はゼミ研修で旭川に宿泊だったので、今朝レンタカーで移動でした。早朝に出て、休憩なしでなんとか開始1時間後に着くことができました。仕事がたまっていて時間的にも体力的にもハードだったけど、ミャンマー人留学生のMさんを連れてきてあげたくて参加を決めました。彼、日本語ができないけど、今回はアメリカ人が講師なので内容を理解できるし、彼の母国ではこういったセミナーはありえないですから。Mさんは、何でも吸収しようと、とても貪欲なので、私の方も張り切って支援したいという気持ちになります。

 

今日のテーマは胎児・新生子牛、育成、周産期の飼養管理でした。

会場はほぼ満席でした。知っている顔も大勢いました。隣の席には、今週末に帯広でやる私が講師を務める勉強会を主催した獣医の先生がいてびっくりでした。思いがけず簡単な打ち合わせができました。

 

今日の気づき

 

  • バターに多く含まれる飽和脂肪酸がかたまり、サラダ油や魚油に多く含まれる不飽和脂肪酸がなぜ固まらないのか。脂肪酸の形状が関係したいた。飽和脂肪酸はまっすぐでコンパクトに密集する。不飽和脂肪酸は折れ曲がっているので、中性脂肪の形になると傘が開くように広がり、密集しない(→流動性がある)。

    中性脂肪は3個の脂肪酸がくっついたものです。脂肪酸でよく目にするのはサラダ油に含まれるリノール酸とかオレイン酸でしょうか。脂肪と脂肪酸、なかなか区別がつかなくて、テストに出すと学生は混乱しがちです。
  • 初乳を飲むと、子牛の第四胃で酸と酵素によってチーズのように固まる。初乳が固まると、チーズ製造時と同様にホエーという栄養満点の液体がしみ出る。この中に、免疫物質が含まれていて、小腸に流れ出て吸収される。ホエーには乳糖、ビタミン、ミネラルも含まれる。

    ちなみに、子牛は乳糖分解酵素を持つが、砂糖分解酵素は持たない。
  • 離乳前に乾草をやるかどうか?
    子牛には、乾草をふんだんに与える方が良いという意見と、エネルギー給与量を高めるためにしばらくの間はスターター(子牛用濃厚飼料)のみを与えて乾草は必要ないとする意見がある。乾草を食べて胃が膨れてしまうと、肝心のスターターを食べられなくなる。子供がご飯前におやつを食べると、ご飯が食べられなくなるのと同じ理論。

    子牛育成の前提。子牛を健康に早く大きく育てて、子供が産める体格に持って行き、牛乳生産を早く開始すること。

    エネルギー摂取量を高めるために、スターター(濃厚飼料)をメインに与えなくてはいけない。ただし、繊維質に対する要求もあるので、スターター摂取量を抑制しない程度の少量を給与した方がよい。

    なお、アルファルファ乾草は嗜好性が良すぎて、子牛は食べ過ぎる。アルファルファはリグニン含量が高く、ルーメン内に長時間とどまるので、スターター摂取量を抑制してしまい、発育増体量が停滞してしまう。

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今日のTo Do

 

今日は本学農場の技師にも参加してもらいました。彼といくつか今後の農場でやれることを、やった方が良いことを話することができました。

 

その中の一つ。

冬期間、分娩直後の子牛にジャケットを着せて保温しようということになりました。

小さい子牛ほど体積に対する体表面面積の比率が大きいので、熱がどんどん逃げ、一時的な低体温症になりやすい。低体温症になると、熱産生のためにエネルギーを消費してしまうので、免疫や健康維持に回すだけのエネルギーが不足し、悪影響が出る。

 

明日は私は講義で参加できないので、残りの情報は技師とMさんに持ち帰ってもらうことにしよう。