今日はこれから東京出張です。
統計処理の講習会に参加してきます。
午後から実習担当があったので、18時半発のフライト。
晩ご飯は、奥さんが持たせてくれた愛情たっぷりのおにぎりを機内でいただきます(^^)
バイオガスプラントとは
再生可能エネルギーという言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
化石エネルギーを使わずに発電したりするもので、風力発電やソーラーパネルなんかは代表選手です。
畜産版の再生可能エネルギーといえば、バイオガスプラントになります。
バイオガスプラント?なんじゃそれ?という方も多いかと思いますので、今日はその紹介です。
昨日の「酪農スピードニュース」で、上士幌町に巨大バイオガスプラント3基が着工中であると報じられました。1基でウシ1200頭分の糞尿を処理できる規模で、発電出力は毎時300kWだそうです。
バイオガスプラントの原理は次のようなものになります。
家畜の糞尿を嫌気発酵(酸素を遮断した状態での発酵)させるとメタンガスが発生します。ちなみに、ウシのルーメンでも、エサが嫌気発酵しており、メタンガスが生産されています。田んぼのような泥の底からぷくぷく泡が出ているのも、メタン発酵でそれほど珍しい発酵ではありません。ちなみに都市ガスはメタンが主成分です。
メタンガスは、それを燃料としてガスエンジンを動かすことができます。
ガスエンジンを動かすと、その動力を利用して発電することが可能になります。自転車のタイヤをこぐと灯りが付くのと同じ原理です。この電気は、家庭用ソーラーパネルを設置しているお宅と同じで、電力会社に売ることができます。
さらに、ガスエンジンを水冷することで、お湯を得ることができます。このお湯の熱エネルギーも有効に利用可能です。
ちなみに、H28年度のメタン発酵による売電単価は39円/kWhだそうです↓
先ほどのプラントは1時間当たり300kW発電しますので、24時間発電したらいくらになるか、計算してみましょう(^^)
再生可能エネルギーの平成28年度の買取価格・賦課金単価を決定しました(METI/経済産業省)
今回の上士幌町の事例では、総事業費は26億円だそうですが、3基合計で年間2億7千万円の売電収入を見込んでいるそうです(酪農スピードニュース 5/9)。単純計算だと、10年運転すれば建築コストを回収できることになります。
ガスを取り終わったあとの糞尿のことを消化液と呼びます。消化液は、通常の堆肥やスラリー(糞尿を液状処理したもの)と同じで畑にまいて肥料として利用可能です。
ここでも大きなメリットがあります。
堆肥やスラリーなどの従来の糞尿処理法は悪臭という問題がついて回りました。特に都市近郊では、糞尿処理由来の悪臭によって地域住民が迷惑を被る事例が発生しています。
しかし、メタン発酵させたあとの糞尿は強烈な悪臭成分が分解されており、匂いが軽減されます。私は変人なのかもしれませんが、結構この匂いが好きです(^^;)
このことは都市近郊型の畜産農家にとっては、お金に換えられない大きなメリットです。
↓こんな風に消化液を散布します。地表面にやさしく撒いていくので匂いの揮散も抑えられます。
このように、これまで厄介ものでしかなかった家畜の糞尿ですが、バイオガスプラントを通り抜けるとエネルギーとしての付加価値をもたらす「資源」に変化するのです。
実は、酪農大では1999年からバイオガスプラントを稼働させています。90年代の導入は、酪農場でみれば日本で一、二を争う早さで、この分野のパイオニアです。我が大学で得られた経験や情報は現在の普及に少なからず結びついており、立ち上げの苦労を分かち合った農場関係者一同は誇りに思っています。
↓できたてほやほや当時のバイオガスプラント周辺の様子。この頃は泉も若かったです(^^)
バイオガスプラントに課題はないの?
良いことずくめに思えるバイオガスプラントですが、課題はないのでしょうか。
実は、私たちのバイオガスプラントは大きな課題に直面しています。
機械や施設の寿命は何年でしょうか?
形あるものは必ず壊れ、やがて使えなくなります。
我が大学のバイオガスプラントも今後いつまで運転を続けられるか、稼働しなくなったときの更新をどうするか、そのことが大きな課題としてのしかかっています。
今回のように自治体レベルで導入するのであれば、減価償却を考え計画的な更新予定を組めるでしょう。ですが、個人の農家レベルで、数千万~億単位の更新をおこなうのは容易ではありません。
身近な例を一つ。
みなさんは、新車を購入したとして、その自動車に何年乗りますか?今の自動車は高性能なので、10年くらいは普通でしょう。ですが20年、30年と乗り続けることをイメージできるでしょうか。30年前といえば私が高校に入学した時で、その時から私の父は自動車を何台か乗り換えています。
どんなものでも買い換え時は必ず訪れます。
施設や機械に依存した農業はこれが怖いです。例えば私と同年齢か、それ以上の世代で導入を決断した方は、後継者の有無にもよりますが、施設更新の時が離農の時になるような気がします。
酪農はシステムなので、一つのパーツが欠けただけでも営農の存続が困難になるケースが生じます。
本学農場も、新しい施設を導入した1999年から2000年代にかけては多くの見学者が訪れましたが、施設が古くなってきた最近は見学者の数も減ってきています。ですが、私は思います。1世代、2世代前のシステムだからこそ、自分たちが導入しようとしている最新システムが老朽化したときのヒントを得ることができるのではないでしょうか。
私が知らないだけで持続可能な仕組みがは検討されていれば良いのだが・・、と昨今の重厚な施設に依存した営農スタイルに触れるたびに思います。